プロローグ
セルティア国、カグナス自治区ー10のシティから成り立つ自治区。シティ・ワン〜シティ・ナインと、シティが作られた順番がそのまま名前になっている。
十番目に作られたのは地下都市ーシティ・ゼロ。
シティ・ゼロの住民は2つのタイプに分けられる。
1つは地上のシティから落とされた犯罪者。
もう1つはシティ・ゼロで生まれ育った…シティ・ゼロしか知らない者。
犯罪者を受け入れているためか、それとも日の光が届かないためか……
シティ・ゼロは荒廃し、無法都市となった。
シティ・ゼロは大きく4つのブロックに分けられる。
Aブロックは、地上に通じるエレベーターのあるブロック。厳重に管理された、犯罪者が送られて来るだけの場所。
BブロックとCブロックは比較的安全で、衣食住に必要な生産業は主にこの2つのブロックで行われている。
Dブロックは最も治安が悪いが、独自のルールや自警組織がそれなりの治安を維持している。
ーDブロック、酒場ー
薄暗い照明、あまり綺麗とは言えない内装の酒場で、何人かの客が酒を飲んでいる。まだ早い時間だと言うのに、すでに酩酊している者もいた。
そんな中で遅めの昼食をとる2人の青年。
1人は肩までのびたウェーブのかかったブルネットの髪を無造作に束ねた、青い眼の青年ーアラス・ウィンディア。肌が白く、左頬にある黒いあざが目立つ。紺のズボンの腰にはホルスター、キャメル色の上着には古ぼけたピンバッジ、右手には焦茶色のフィンガーレスグローブ。
もう1人は短めの黒髪ストレート、榛色の瞳の青年ータート・タットラム。黒地のズボンと同じ生地の上着、テーブルの上にあるグローブも黒。
「アラス、タート。お前らもやんね?」
2人が食事を終わらせたのを待っていたかのように、客の1人が手にしたカードをヒラヒラさせながら聞いてくる。
「ああ、やろうか」
「俺は、いいよ。見学させてもらう」
アラスが席を移動し、配られたカードを手にする。
金がかけられカードチェンジが行われる様子を、タートはコーヒー片手に見学。
「タートはやらないの?」
「遠慮しておくよ、アラスみたいに勝負事に強くはないからね」
顔見知りの女が声をかけてきたのに答える。アラスの側にも数人の女がいて、勝負を見守っていた。
しばらく、遊戯に興じ……。
「……アラス、時間だ」
「解った」
「もう行くのか?」
「ああ、仕事だ」
勝負の相手に答え、2人は揃って酒場を後にした。