#6.5 異世界の悪人達に問う
未発見の異種空間。空中を漂う不可視の城塞。その最上階にて。
「第二選『工場長』、ただいま帰還致しましたわ」
鉄の女が見上げる先には、魔王……否、『聖帝』が鎮座している。
「よくぞ戻ったな。少し時間がかかったようだが」
「はい、少し……三級の冒険者に手を焼き……取り逃しました」
「ハァ~~??wwおいおいアンタ二級相当だろ??wwなにしてんのwwギャアーッハッハッハァーッ!!!!」
両壁際にいた数人の内、ボサボサ頭の男が爆笑し蔑む。『工場長』はその人物を睨む。
「お止めなさい『三日鎚』。まだ『聖帝』様と謁見中ですよ」
笠で顔が見えない黒色の甲冑を全身に纏った剣士が静止する。
「も、申し訳ございません。次は必ず」
「まぁいい。三級だろう?いつでも始末できるさ」
『聖帝』と呼ばれる人物に向き直り頭を下げた『工場長』。
彼が腰を上げ下々を見下ろすと、更に口を開く。
「絵本は一度当たれば一生食っていける」
「……?」
皆首を傾げる。
「世代を越え、親から子へと語り継がれるからだ」
彼は階段を降り始める。
「一度でも、大きな当たりが必要だろう。ちまちま冒険者を潰して回る段階は終わりだ」
「……!」
「『雨』を出せるか?」
彼は笠の剣士に問いかける。
「お任せください。必ずやこの第四選『綻火』が」
『綻火』は頭を下げると、急ぎ足でその場を去った。
「ところで『工場長』よ。その三級冒険者の名前は分かるか?」
「はい、セバナ・ヨーイチと、名乗っておりましたわ」
「……、背花陽一。か」
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