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#6 異世界に何かが起きている

 「ここを降りて真っ直ぐ行けば、ポーションの源泉があるはずです」


 宝箱に入ってるとかじゃなくて天然で湧いてくるんだ……。


 まぁ兎に角、ボクは木々の合間から奇襲を仕掛けてくる魔物達を蹴散らしつつ、確実に距離を縮めていく。


 「……、ここです」


 ようやく辿り着いた。植物の間から覗く岩の割れ目から色味のついた液体が湧き出ている。


 「すぐ済ませます。これで……」


 リスズちゃんが瓶に注いでいる間、ボクはさっきの触手まみれの魔物について考えていた。


 道中で出会った魔物はなんというかこう……、伝わるか分からないけど、動物、って感じだったんだよね。ヒョウとか。


 でもあの触手の魔物は違う。明らかにアイツだけ浮いている。


 出くわさないといいけど。


 「終わりました。行きましょう」

 「さっきと同じ道だね。よし」


 ズズゥゥゥンと、大地が揺れる。


 「な、何!?」

 「多分さっきの魔物だよ。見つからないように慎重に行こう」


 終わったら協会か騎士団に報告するかな……。


 たまに遠回りしながらも、何とか来た道を戻っていく。もうすぐ出口のはずだが……。


 「うそ~……」

 「ズゴォォォォォ……」


 あろうことか触手の魔物が出口の前で熟睡しているではないか。


 「えぇ~……」


 リスズちゃんも動揺している。


 やっぱり……アイツは、冒険者の妨害が目的なのかもしれない。だとしたら……やはり、考えられるのは隣人会。


 きっとリスズちゃん達が出会った呪いの魔物も……もしかしたら……。


 一人で様子を見に行きたいところだが、アイツ以外にもここには魔物がいる。リスズちゃんと離れるわけにもいかないのだ。


 「なんとか……ここから追い払えないでしょうか?」

 「石をぶつけてみよう。隠れてて」


 三級ができる最高速度で、その辺の石ころを触手の魔物に投げつけた。


 その後ボクも急いで隠れて様子を伺う。


 「オオオオオォォォォォ」


 目を覚ました魔物が身動きする度に地響きがする。


 ……次第に地響きは小さくなっていく。


 「……よし、もう大丈夫だ。行こ……」


 顔を上げると、遠方で無数の触手の中から覗かせる単眼と目が合った。


 ……二体いたのか。


 「走れッッ!!」


 魔物との距離より出口との距離の方が短い。逃げ切れるはずだ!


 しかし、想像以上に伸びる触手がボクの後ろにいたリスズちゃんの足を掴んで、引摺り込もうとしてきたではないか。


 「いやあああああ」

 「!この……ッ!!」


 Uターンして触手を切断する。魔物がこちらへ走ってきた。


 「リスズちゃんは逃げて!ボクは戦う!」

 「っ……ごめんなさい……!」


 それでいい。守りながら戦うのはキツい。


 無数の触手が襲いかかる。それをかいくぐり切断し、こちらも駆け出して魔物に接近する。


 「らあっ!!」


 いい距離まで接近し、大きく飛び上がる。いかにも弱点そうな大きな目玉にギャリギャリトをフルパワーで振り下ろ


 「ガ”ッ”」


 せなかった。腹に強烈な触手の殴打をくらい、派手に吹き飛ぶ。


 視界の上下が逆さまだ。


 「こんちきしょ~……」


 近接は分が悪いか。……でも、ボクの攻撃手段はギャリギャリトくらいしかない。


 「隙を、突いて、目は……諦めよう。真正面すぎる、な」


 木々の合間を移動しながら魔物を撹乱し、徐々に接近しようとおもったが……。


 また電流。後ろを向くと、先程出口で寝ていた方の魔物が後ろから木々を投げつけてきていた。


 「うっ!?」


 ギャリギャリトで粉砕する。が、前方からの魔物の触手が無数、迫ってきていた。


 「ヤバい……ッ!」


 くらう。そう覚悟した瞬間……。


 バチィッ!と音がした。痛みは無い。半透明の壁がボクと触手の間に出現していた。それと、もう一人。


 「大丈夫ですか!?ごめんなさい!心配で来ちゃいました!」

 「リスズちゃん……!助かったよ!」


 これは助かった。リスズちゃんに指示して二体に挟まれない位置に移動する。


 「遠距離攻撃が欲しい……何かできないのかボク!?」


 必死に自分に問いかける。意味の無い行為に思えたのだが……。


 突如、全身を駆け巡る電流が右腕に集まる感覚がした。


 「……?従えば、いいのか?キミに……」


 思えば何度もこの電流に助けられた。電流の正体は未だに不明だが、これに従えば大抵上手く行っていた。


 「危ないから下がっててね!」


 二体の魔物に向けて右手を向ける。『工場長』がやっていたように。


 魔物もこちらに触手を伸ばしていた。だがもう遅い。


 ────叫べ。


 「……焼夷!!」


 眼前が光で染まった。いや、炎だ。他の全てを遮断しかねない轟音の中から僅かに魔物の断末魔が聞こえた気がする。


 放射し終えた後の光景はあまりにも壮観だった。直線上の森が何も遺さず丸々消失し、真っ黒で広大なカーペットを敷いている。


 「……」


 リスズちゃんは絶句している。


 「……帰ろっか」


 ボクもそれしか言えなかった。


 ==========


 「……う、ううん……ん?」

 「ミントちゃん!」

 「ミント!良かった……」


 それから無事帰還し、ミントちゃんの目が覚めるのも彼女の仲間達からは少し離れて確認した。仲間達の安堵したような顔も見れて良かったよ。


 「あの、本当にありがとうございます。何てお礼を言ったらいいか……」

 「いいんだよ。また会ったらその時は宜しく」

 「あ、あの……」


 リスズちゃんがボクに寄ってきた。


 「ん?」

 「また……会えますか?」

 「うん。また会えるよ。キミはすごく頼もしいから、いてくれたら安心するな」

 「……!えへへ……」

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