#4.5 異世界のチュロスは不味い
今回は短いです
ボク含めた四人はあれから何とか異種空間から脱出し、待機していた受付嬢に事情を伝えて騎士団に通報してもらった。
回復魔術を施してもらった後の事情聴取を終えた頃には、すっかり日も暮れていた。
「セバナ、それ、やるよ」
「え……?でも……」
「いいんだ。俺達を助けてくれたせめてもの礼だ」
ボクは魔刃ギャリギャリトを手に入れた。
「……ゴンドーさん、貴方は、これからもこれを続けますか?」
「ずっと続けてきたさ。……まぁさすがに、今回みたいなのは初めてだったがな……そうやって俺達冒険者は生きてるから」
「そうです、か……」
「当分は行かなくて済みそうだけどな!騎士団からの謝礼がたんまりだ」
ボクとしても、協会からの報酬より騎士団からの謝礼の方が多い結果となった。これだけあれば孤児院もかなり持ちそうだ。
「それじゃあな。助けてくれて、ありがとう」
ゴンドーさん達と別れた後、なんとなしに商店街を歩いてみた。もう暗くなってきているがまだまだこれからと言った感じだった。
ボクはそこでドーナツ屋を見つけた。
「……すみません。チュロスを一つ」
妙に物価が高い気がしたが、今日稼いだお金に比べればなんてことは無い。
チュロスは……一度だけ親に連れて行ってもらった遊園地で食べた真っ直ぐで長いヤツしか記憶に無かった。
一口かじる。
ボクは行方不明扱いになってるだろうが、心配してくれる親はもういない。
一口かじる。
小さい頃は孤児院で過ごしていたのだが、それが理由でよく虐められた。
チュロスを一口かじる毎に、元いた世界での記憶が甦っていく。
「……うっ、うぅ……グッ……」
泣きながら食べる飯程不味い物は無い。