#2 異世界でもお金は大事
人攫い事件を解決してからはかなり早くこの世界にも順応するようになった。が、この力についてはまだよく分からない。
まぁいいか。ボク最強~。
「はぁ~……」
と、柄にもなくため息をついているルミさんを見つける。
「珍しいね。どうしたの?」
「あ、すみません。最近お金が足りなくて……」
「お金? こういう施設って国からの援助とかないの?」
「あるにはありますけど、それだけじゃ足りないんです。置き去りにされてた赤ちゃんの面倒もまた見なければいけませんし」
ははぁ成る程。やっぱりというか当たり前だけど異世界でもお金って必要なんだね。
「じゃあボクが稼いでくればいいってわけだ」
「え?」
「ボクなら余裕だよ。めっちゃ強いしボク。確かさ、あれが」
そう言ってボクは積まれた新聞紙を漁ると、すぐに目的の物を見つける。
「ほら、『新たな異種空間発見』だって。報酬も貰える」
『異種空間』とはつまり、ゲームでいうダンジョンみたいな物だ。文字通りボクからすればハチャメチャな世界の中でも特にハチャメチャな空間。
難易度は色々だけれど、拾った物を持ち帰ったり、探索して成果を出せば報酬も貰える。ボクにピッタリだ。
「で、でも、セバナさんにはもうすっごく助かってもらってますし、これ以上負担をかけるのは……お金ならなんとかします」
「何で!? これなら楽にお金を稼げるのに!?」
「離れて欲しくないんだよ。だって手伝いが減るのは困るし、それとルミ姉ちゃんはセバナ兄ちゃんのことがす──「。@。w↓↑?〇 ̄*>!!!」
突然後ろから男の子が語りかけてきたのをルミさんは大慌てでその口を塞ぐ。
……分かりやすいなぁ。
「ぐぅ……でも、大丈夫だよルミ姉ちゃん。僕達これまで以上に掃除とか洗濯とか沢山手伝うからさ。セバナ兄ちゃんにはお金を稼いできて貰おうよ。騎士団もこの辺りを見回りするようになったからこの前みたいなことももう無いって」
「むむ……」
ルミさんは考える仕草をして、口を開く。
「分かりました。セバナさん、本当に申し訳ありませんが、宜しくお願いします。ここは任せてください」
「うん、頼ってくれてありがとう」
「頑張ってね、セバナ兄ちゃん」
あだおうよ。
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孤児院の皆と少しのお別れをした後、バスを使って首都を目指す。魔術と科学が入れ替わっている以外は交通の面でも元の世界と遜色無い。
窓を通して未知の景色が移り変わっていくのを眺めながら、ルミさんに作ってもらったお弁当を食べるのは最高だった。
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「冒険者協会前~、冒険者協会前~」
首都ラキミア。そこにボクの目的地である冒険者協会の本拠地が存在する。
言わなくていいと思うけど『冒険者協会』ってのは異種空間を探索するスペシャリスト達の集まりってことね。ここで登録しないと異種空間の探索ができないんだって。面倒じゃない?
ボクもこの世界にネットとかを期待したかったんだけど、電波が軒並み魔術由来の物になってるから、案の定悪質な魔術師にハックされまくってめちゃくちゃにされてからは衰退したんだって。
ここ向こうより治安悪いからそういう人は多いんだね。
バスを降りて街を見回すと、やはりというかなんというか首都だけあって非常に人が多くて栄えている。
街並みはというと、欧州みたいなお洒落な白塗りの建物が沢山並んでいて、一際広い道路にはカラフルな屋根を立てた出店の周りを大勢の人が行き来している。
そしてそんな街の中でも特に目立つのが、この街で唯一ビルに負けないくらいの高さと迫力を持っている王の宮殿。それと、目の前にそびえ立つ赤レンガの建物。
冒険者協会本拠地だ。
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