差し出されたノート
「んがっ!」
突然頭に感じた衝撃で俺は眠りの世界から現実へと引き戻される。
俺は頭を押さえながら顔を上げるとそこには不機嫌そうな委員長が立っていた。
「あれぇーいいんちょーどったの?」
「いつまで寝てるつもりだこの馬鹿、もう昼だぞ」
「えぇーまじでぇー」
やっべー寝てたわ俺。授業で寝るなんて最悪じゃん。
委員長も俺のこと冷めた目で見下ろしてるし。
学校来た意味ねぇし、本当最悪だ俺。
自己嫌悪に陥りつつもキャラを壊さない様、あははーと笑いながら席から立つと委員長が何かを差し出してきた。
「ん?何これぇー」
「ノートだ、今日までの分……必要だろう」
委員長は俺から顔を逸らしながらノートを俺の机に置く。
何か感動してしまった。俺の為に誰かがノートなんて取ってくれてるなんて。
チャラ男な俺は授業に出なくても心配なんてされない。
寧ろセフレとなんかいたしていると思われてるらしく、僕もされたーいとか言っているのを陰で聞いてしまった。
でも委員長はノートを取ってくれた。チャラ男の俺の為に。何か嬉しいじゃんかよ。
「いいんちょー大好きだぁー」
「!お、お前、は、離れろ!」
俺は何だか嬉しくてついつい委員長に抱き付く。
クラスがざわついたとか、委員長の声が震えていることとか、今は気になんねーわ。
だって俺チャラ男だし、これくらいは許されるよな?
だけど俺は委員長にも迷惑を掛けたくはないからこれは忘れない。
「もちろんクラスの皆もあいしてるよーん」
へらりと笑い、片腕を委員長の首に回しながらもクラスの皆に向けて投げキッス。
正直やってるのが自分だと思うと、寒気がするけど仕方ない。
皆平等に、が俺のスタンス。これによってクラスは再び騒ぎ始め委員長のことは印象には残らない、はず。
俺はポケットに手を突っ込みながら財布が尻ポケットに入ってるのを確認し委員長に笑いかける。
「んじゃーいいんちょーお昼一緒しようよー」
「あ、あぁ」
授業中寝たおかげか、少し頭がすっきりして足取りも自然と軽やかだ。
委員長も俺の後に続き教室を出る。委員長も弁当がないみたいだし購買に行くには遅すぎる――
なら、食堂か。あんま食堂行かないけどたまにはいいか。
――しかし、俺はその選択をしたことを、とてつもなく後悔することになる。