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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
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告白の返事





「甲斐先輩が、好きなんですよ!」


予想もしていなかったその言葉に、俺はどうしたら良いか分からず立ち尽くした。

頭が上手く働かず、暫く何も考えることも出来なかったけど何度か瞬きをしている内に、現状がどのようなものか理解出来た。


俺は今、勇助くんに告白されてる――?


でも、勇助くんって転校生くんが好きなんだよな?え、でも俺が好きで?どうなってんだこれ。


っていうか、ほぼ初対面の相手に告白されたりするのには流石に慣れたけど、顔見知りの人に告白されるのとかはいつまでたっても慣れない。

どう返事したらいいだろうとか、どう反応すればいいんだろうとか、頭の中で思考の糸がぐるぐると絡まりあってて混乱する。


どうすればいいんだ?!周りに日向とか委員長がいるから、迂闊な発言は出来ねぇし。

俺は自分の中で色々な考えを巡らすが、とりあえずこれだけは聞いておこうと口を開く。


「それって――本気で言ってるのぉ?」


勇助くんの顔をみれば本気で言っているんだろうとは思ったけど、でも学校ではチャラ男とか、軽い男で通ってる。そんな俺を好きになったなんて、信じられなかった。

彼はスポーツ特待生で未来を期待されてる選手だし、しかも爽やかなイケメンだし、良い奴だし。そんなパーフェクトに近い人間が、俺を?


理解、出来なかった。


「本気ですよ!本気じゃなかったら他人がいる前で言いません!」


高校に入ってからは、俺の目立つ外見に惹かれて告白してくる奴が多かった。

まぁ一年の最初の頃だけの話だが――生徒会になって、セフレの噂が出てからあんまり告白もなくなった。その分上級生のアプローチがあったりしたけど。


「そう?それじゃあ俺のどこが好きなのー?」


勇助くんは俺のどんなところが好きだなんて言うんだ?俺は自分の中に生まれた好奇心に勝てず、顔を茹で蛸のように真っ赤にしている勇助くんに聞いてみた。

勇助くんなら、何て答えるんだろう。何か気になった、他の人とは違う答えを口にしてくれるのだろうか?なんて。


すると勇助くんは、一呼吸置くと恥ずかしそうにこう言ったんだ。


「優しいところ、とか……結構真面目なところとか……」


また、予想外の言葉を頂いてしまった。

俺が、優しい?勇助くんに優しくしたつもりはないんだけど。

真面目にしたつもりもない。仕事が見つかったときは誤魔化したし。あ、でもそういえば意外と義理堅いですよね、とか言われたっけ。


「は?顔とかじゃなくてぇ?」

「か、顔も好きですよ?!」


俺は思わず聞き返してしまい、勇助くんは目をぎょっと見開いてそれを肯定する。

それにおもわず俺は噴き出してしまった。だってまさか素直に肯定されるなんて思わなかったから。


「べ、別にそんな必死に肯定しなくてもいいってー」

「や、で、でも……!」


おもしろい子だよなー勇助くん。こんな必死になって焦ったり照れたり。

本当に転校生くんが絡まなければ普通に仲良くしたかった。


でも、さ。


「でも、ごめんねぇー」

「……え?」

「俺みたいな奴、好きになっちゃ駄目だよー君はー」


へらりと、いつものように笑おう。そしてここから立ち去ろう。

だって駄目だろう。勇助くんみたいな良い人がさ――偽りだらけの俺を好きになっちゃ。


もし、本当の俺が今目の前にいる俺とは違うと知ったら、きっと勇助くんはショックを受けると思う。多分。まぁ知られるつもりはないんだけどよ。


壱岐の告白?はアイツが俺の素を知ってるからああいう終わらせ方が出来たってだけで、勇助くんは違うから。


もっと良い奴がいるだろ、勇助くんには。勇助くんの気持ちを否定するのは心苦しいが――でも駄目だ。駄目なんだって。


「戻ろうかいいんちょー、早くしないと昼休み終わっちゃうしーつき合わせてごめんねぇー」

「あ、あぁ……」


呆然としている勇助くんを横目に見つつ、俺は委員長に微笑みかけ教室の入り口の方まで歩いて行く。


委員長も俺の返事を聞いて驚いているみたいだった――まぁ、こんな断り方をしたのは初めてだ俺も自分自身で驚いてる。


「甲斐先輩!」


俺が教室の扉を開けようとした瞬間、背後から勇助くんの呼び止める声が聞こえた。


しかし俺は勇助くんの方を見ずに日向と視線を合わせ、軽く頭を下げる。


「日向、ちょっとここよろしくー」

「う、あ……は、い!」


俺と目が合った日向は、背筋を伸ばし返事をしてくれた。以前の日向はいつも猫背だったのでピン、と立っていると普段よりも大きく見える。


頼まれてくれるみたいだな、この様子だと。短い間で随分頼もしくなったな。さっき泣いてた奴とは思えねぇ。

でも頼む、日向。そして悪ぃ。


多分勇助くんは納得いっていないんだろう。このままでは食いつかれるのがオチだったから、予防線を張らせてもらった。

日向に頼むのも申し訳なかったが今は他に頼れそうな奴はいない。武蔵と俺が友人だと勇助くんは知らないし。


俺は日向にこの場を任せ、再び顔を正面に向ける。そして教室の扉を開けると、委員長と共に教室から出た。





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