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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
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そしてとある日



あれから数日が過ぎ――俺は疲れていた。且つとても眠かった。


理由は石見先生から受け取った書類を明け方までやっていたから。


っていうかあの量はないだろう……会長達は本格的に仕事を放棄してるんだな。ったく。


しかもまだまだ残ってるし、もう俺泣きたい。でも先生に苦労かけたくねーしやるしかねーって。



でも俺はここ三日間ほど授業に出席していなかったのでそろそろ授業に出ないと何処まで進んだか分からなくなってしまう。


俺は眠っている頭を無理矢理起こして制服のジャケットに腕を通した。



――生徒会役員には特権があり、その一つに授業を欠席しても公欠扱いになるというものがある。


まぁ主に仕事が大量にある時にこの特権があると便利だからってつけられたらしいけど。


今の会長とかは転校生に纏わり付くために使ってるし、しかも何故か転校生まで公欠にしちまうし。


ばっかだよなーんなことしても本人の為になんねーっての。


「ふわぁあ……」


大きな欠伸を一つ。

口も鼻も押さえなかったからすっげー不細工だったろうな。

こんなとこ誰にも見せらない。見せたくもないけど。


「よし、今日も行くかー」


頬を手で叩き気合を入れ、鞄を肩に掛けると部屋を出た。

俺は自室から出るとスイッチを切り替えるかの様にチャラ男モードに突入する。


廊下、寮の入り口、通学路。様々な場所で挨拶される度にそれを返しながら登校するのが俺のポリシー。


なんたってチャラ男だから。可愛い子にはにっこり笑顔つきだったりもする。


そういえば俺にも親衛隊ってあるんだけど、隊長ってどんなんだろ。今の隊長は知らないんだよな。


去年の俺の親衛隊隊長は卒業しちゃったから誰かに引き継がれてる筈なんだけど挨拶に来ないし。



あぁ忘れてたーーうちの学園には親衛隊なるものが存在していて。

生徒会メンバーには全員親衛隊がある。もちろん俺含め。


風紀委員は自らが風紀を乱さない為に親衛隊を作るのを許さないらしいけど。


後は格好いい子とかー可愛い子にもある。


転校生くんの取り巻きの不良くんとか、爽やかくんとかが格好いい人で親衛隊がある例。


だから転校生くんは親衛隊に疎まれてるんだってさ。軽く虐めとかされてるらしい。剃刀レターとか、机落書きされたりとか。


でも俺の親衛隊は穏健派だし。多分大丈夫。それに俺転校生にあんま近付いてないし。


会長とか双子のとこは結構過激派らしい。近付くものには制裁あるのみ!みてーな。怖いったらねーよ。


副会長んとこと、俺のとこ、後書記のとこは穏健派だな。


後は教師にも親衛隊とかあるらしいけど詳しくは知らねー。


風紀から親衛隊のやった虐めの報告だの、後始末だの、こっちにも仕事回って来てるんだってーの。


迷惑この上ない。


転校生もあの見た目に反しガンガン物怖じせず言うから、余計事態が悪化する。


しかも微妙に礼儀知らずっぽいし。以前副会長に転校生を何で気に入ったのか聞いたら


「笑いかけたら、何だよその嘘っぽい笑顔!俺の前ではやめろよな!そういうの・・・・・・って言ってくれたんだ」


いやいやいや。


ただの失礼な少年だろそりゃ。どんだけ盲目なんだ副会長。


もうちょっとオブラートに包め!遠まわしに!美しい日本語を!


まぁそれが副会長には新鮮で気に入ったらしいんだけど。


俺的にはなんか残念な感じ。しかも初っ端タメ口ってどーよ。年上には敬語を使え!敬え!


俺なんか石見先生に内心申し訳ないなーと思いながら喋ってるのに。でも流石に最初は敬語だったぞチャラ男の俺も。


そういえば最初に俺に会った時も転校生普通にタメ口だったな。名前教えたら名前で呼ばれたし。


駄目だ俺。そういうの。馴れ馴れしすぎるの嫌い。まじ何なんだって思っちゃうタイプ。


生徒会室に近付かないでよかったー俺多分キレるかもしんない。ずっと傍にいたら。


そんなことを考えてたらいつの間にか俺は教室の前まで辿り着いていた。


俺はハッと我に返り、扉に手を掛けスライドさせ教室へと足を踏み入れる。


「おっはよーん」

「甲斐様だ!」

「甲斐様がいらっしゃった!」


俺がにこやかに挨拶をすると教室の中がざわつく。


数日振りのクラスだしなぁ。仕方ねーか。


身長が小さくて目をクリクリさせた子犬みたいなクラスメイト達は俺のことを見て頬を赤く染めた……気がする。


体格の良い男子の鼻息は少々荒い。うん。キモいな。


俺の学年では生徒会は俺しかいないからかめっちゃ見られるんだよな。他にも格好良い奴いるのに。


やっぱり生徒会、っていう付加価値が付いているからだろうか。


「久しぶりの登校だな、甲斐」

「いてっ!あ、いいんちょーじゃーん、おっひさー」


俺の頭を軽く叩いたのは通称委員長。

まぁその名の通り学級委員長だから、委員長。


黒髪、そして鋭い目にノンフレームの眼鏡を掛けている委員長はインテリ系な美男子だ。と俺は勝手に思っている。


俺も中学の時授業中眼鏡掛けてたら友人に何かエロイって言われたしな。頭良さそうにはみえねーってのか。


叩かれた頭を擦っていると、委員長は少々ずれた眼鏡を中指で上げて直し、真剣な色を含んだ瞳で俺を見据えた。


「ちゃんと登校して来い、教員に反感買うぞそのうち」

「何?俺のこと心配してくれてんのー?超うれしー」

 

俺ははぐらかす様にニヤニヤしながら委員長の肩に腕を乗せると、それを振り払われる。


やっべ、怒らせたかな。これは早々に立ち去ろう。委員長怒ったら怖いから。


「ーー甲斐!人が好意で言ってやってるっていうのにお前ってやつは……!」

「はいはーい胆に銘じておきマース、ありがとねーん」


委員長の言葉を遮るように俺は口を開くとそのまま自分の席へと向かった。


委員長の忠告は嬉しかったが俺も譲れない。


学校を休まなきゃ仕事進まねーしな。俺は別に教師になんて思われようが構わないし。


ちなみに俺の席は窓側の一番後ろ。ベスポジ。


あんま授業に出れないってのもあってここ。廊下側は寒いからって遠慮しちまった。


机の中はプリントとかが綺麗に収まっており、誰かがやってくれたのかと何だか申し訳なくなる。


俺は席に座り、窓から見える景色をボーッと眺めていたら、自然と意識がフェードアウトした。



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