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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
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会議は終わり




会議っていっても委員会毎の報告みたいなもんだ。

月に一度開かれている報告会議、みたいな。

まぁこの時期だと風紀や生徒会以外の委員会はあんまり報告するようなこともない。問題もないしな。

もうそろそろ臨時に咲華祭委員会とか結成される時期だけど。


「――以上で報告を終わります」

「では次は風紀委員会――安芸」


会議の最後は風紀委員、生徒会と報告をして終了となる。

つまり、もうすぐ会議は終わるってことだ。

あー長かった。委員会って結構あるよなー部活ほどではねぇけど。

でも進行役の周防先輩のおかげかスムーズに進んでるし、すげぇな先輩。


「はい」


周防先輩の呼びかけで、安芸くんが資料を手にしつつ席を立つ。


「えー服装、頭髪指導日での注意対象者は七十九名、前回よりは減少していて――」


風紀委員って服装、頭髪だけじゃなくて校則だとか親衛隊の制裁についてだとか仕事量半端ないよな。

しかもそれをちゃんとこなしてるんだからよ――尊敬するわ。今の会長とかに爪の垢煎じて飲ませてやりてーっての。

ちなみに俺指導日の日はちゃっかり休んでたんだよなーあ、サボりじゃなくて仕事な仕事。


生徒会でも服装とかについて言われたりするんだよなー、って微妙に安芸くん俺のこと見てるし。こっち見んじゃねぇよ。


「次に親衛隊の制裁行動については増加の傾向があり、しかもそれは一人の生徒に対してという報告が入っています」


なんかちゃんと喋ってる安芸くんって何だか男らしいな。

さっきの噛み付いて来た男とは思えねぇ。


俺は安芸くんの顔を眺め、シャーペンを指でくるくる回しながら報告を聞いていると、ピタリとその指を止めた。


安芸くんが言う一人の生徒って――若狭くんのことだよなぁ。


「この中にはそんな馬鹿げたことをする人間がいるとは思いませんが――良識ある行動を風紀委員は求めます、報告は以上です」


うげぇ、また挑発するような瞳で俺を見てよー。

俺の親衛隊は何もしてねーっての。まぁ風紀ならそこらへん分かってるだろうけど。

この言葉を委員長連中がちゃんと下の奴等に伝えればいいんだけどな。どうだか。委員会入ってない人間もいるし、全校集会でもない限り、全員に伝えることは難しいか。


「着席していい――最後に生徒会」


周防先輩の視線が一度安芸くんの方へと向かい、安芸くんが座ったのを確認すると今度は俺の方を見た。


「あ、はーい」


俺か。うわーやべぇ緊張する。

緊張を悟らさないように、かつ真面目だとは思われないように俺は表情を作り、席から立ち上がる。


「えーっと生徒会からは九月半ばに予定されている咲華祭についてでーす」


咲華祭はクラスでの出店、文化部による催しや展示会がほとんどだ。

生徒の自主性を重んじる学校らしく、生徒が主体となって行われる。


「予算は一クラス十万程度で、文化部については領収書を提出の上――」


十万って随分な坊ちゃん校だよな。俺的に。しかも程度だからこれから前後したりもする。

しかもここから、でっかい機材とかは別に予算が出たりするんだぜ。生徒からの徴収も五千円まではありとか。


俺は走り書きしたメモの文字を、自分の脳内で言葉に変換しながら話をした。

まぁそこまで深くやんなくていいよな。うん。

飲食店は食品に触る人間全員検便を提出するとか、スペースについては候補からクラス毎希望を出し被ったらくじ引き、とか。


この会議には学年委員も参加してるからな――そっちから学級委員、つまり俺のクラスでいう委員長に報告が行くってわけだ。

ちなみに委員長は学級委員長であって学年委員ではない。学級委員長って二人いる学級委員の偉いほうってだけ。ややこしいよな。


「ってこんなとこですー報告は終わりー」

「了解した、着席してくれ――何か質問ある委員会はあるか?」


しーんと、会議室に沈黙が流れる。

よっしゃ、帰れる!と俺は心の中でこっそり喜びながらプリントを鞄にしまう。


「よし、ならば今回の定例会義は終了とする――解散」


周防先輩の解散の一声で、皆はガタガタと椅子を揺らし、さっさと会議室を去っていく。

まぁあんま長居したい場所ではないよな、神経がピーンと張るっていうか。緊張するっていうかよ。

俺もとっとと帰ろうと席を立った。


「――甲斐」


いきなり低い声で呼び止められ、俺は振り返る。


さっきまで聞いていた声だから俺は呼び止めた人間を間違えはしない――俺を呼んだのは、周防先輩だ。

早く解放してくれよ……


「はーい?何でしょー?」

「君は、ちゃんとしているんだな――今の生徒会の中でも」

「は?何言ってるんですかー?」

「石見先生に言われたからと言っていたが、そうだとしても伝えるべきことを伝えていた」


……嬉しくないって言ったら嘘になる。

薄く微笑みながら俺に言ってくれた周防先輩の言葉は。でも俺は、そう言われてはいけないんだよ。

俺は頭をフル回転させて、言葉を紡いでいく。


「いやー俺はいわみんに言われた通りのことを言っただけですってー」

「それでもそれを実行するということは、駄目な人間ではないということだ」


うげー。

この人に何を言ってもこんな感じで返されそうな気がする。


「……そう思いたいならご自由にどうぞー」


もういいか、思いたいならそう思わせておけば。

あんまりこの人と関わることもなさそうだし――多分。


「ああ、それに君の親衛隊は穏健派でこちらとしても楽だ」

「あーそうですか、うちの隊長に言っておきまぁす」


すると今度は周防先輩は俺の親衛隊まで褒めだした。うん、これは素直に嬉しい。

皆ちゃんと制約を守ってくれてるんだな。

っていうか何で今回は風紀委員は副委員長の二人だけなんだ?こういう場って普通委員長じゃねぇの?――まぁ俺には関係ねぇけど。


「それじゃー今日はお疲れ様でしたー周防先輩」

「ああ、お疲れ」

「待てよ甲斐!」


俺がへらりと緩い笑みを周防先輩に向けて別れを告げると、周防先輩の後ろから人が出てきた。

小さいから気付かなかった――って俺失礼だな。


にしても会議が終わったからか、すっげぇ威勢が良くなったなー安芸くん。


「何ー?安芸くん」

「よかったら寮まで一緒に帰ろうぜ?」


何だ、いきなり好意的になったな。

ちょっとびびった。

でも、こういう聞き方は――嫌いじゃないな俺。

「よかったら」って付けるってことは、相手に選択肢を与えるってことだから。


「――いいよー帰ろうかー」

「おう!」


俺はその誘いに頷いてみせると、安芸くんはニィ、と口の端を上げ照れくさそうに笑い、机に置いてあったショルダーバックを斜めに掛ける。


安芸くんはぴょんぴょんと飛び跳ねるように歩き、扉まで行く。俺は周防先輩に会釈してからそれを追った。


何だかおもしろい奴だな、安芸くん。

しかも、何だか似てるんだよなぁ、どことなく。

アイツの方がまだガキっぽかったけど。





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