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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
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手渡された上着







「甲斐先輩?」

「――んー?」


俺がボーッと人通りのない階段を下りていると、階段を上っている人物が俺の呼んだ。

声のした方へと視線をやると、そこにいたのは勇助くん。


っていうか結構遭遇するよなー勇助くんと。


勇助くんの肩にはボストンバックが掛けられていて、部活へ行く途中なのか。と勝手に思う。

っていうかもう六限目終わってたのか?全然気付かなかったっての。


「ゆーすけくんじゃんーこれから部活?」

「……はい、でも教室に忘れ物してしまって……って先輩随分寒そうな格好してますね」


何か前もこんな感じの会話したな。

まぁ別に世間話をするような仲でもないから、これが無難だ。


勇助くんがチラチラと俺の顔と服を交互に見つつ言うことに、俺は苦笑した。


「あー……まぁ、色々あってさぁー」


日向に掛けたなんて言えるわけもねぇし、含みがある言葉を選んだ。

勇助くんって結構純だからな。すぐに顔赤くなるし。実際今も赤いし。


「さ、寒くないんですか?」

「んーまぁ、寒いよねー」


勇助くんが戸惑い気味な様子で俺に話し掛けると、俺は首を傾げながらヘラリと笑った。


普通に寒いっての。まぁ寒がりってわけでもねぇけど、さっきまで温かい格好していたからか、急な温度差に体が付いていってないんだろう。


すると勇助くんはバッグのファスナーを下ろし、そこからウィンドブレーカーの上着を取り出して、俺へ差し出してきた。


「ならこれ……どうぞ」

「へ?いいのー?」

「は、はい、あ、今日まだ着てないから綺麗ですよ?!」


なんか随分優しいな勇助くん。紳士紳士。

そんな必死な顔で綺麗さアピールしないでも、気にしねぇって。

数日洗ってない、とかなら話は別だけどそんなことはなさそうだしな。


「ふーん、別に気にしないけどねー……あ、でも」

「はい?」


って、でも、借りるってことは……

俺はあることを思い出し、受け取る手を一旦止める。それに勇助くんは目を丸くした。


「借りるってことは返さないといけないんだよねー?」

「そりゃあそうですよ……何言ってんですか」


そう。勇助くんは一年S組の人間なのだ。

つまり――転校生くんがいるってこと。勇助くんがいる時に教室に行けば、九分九厘転校生くんもいるだろう。


勇助くんは転校生くんの取り巻き――って言い方悪いか、仲良いオトモダチの一人だから。


「んーいや、返すのはいいんだけど……ゆーすけくんの教室に行くのが、ちょっとねー」


俺が苦い顔をすると、勇助くんも俺が何を言いたいか分かったらしく口を閉じた。


昨日も色々あったわけだからなー。行きたくねぇんだよ。っていうかもう転校生くんと絡みたくない。


「なら、俺が取りに行きますよ」

「はい?」

「それなら、問題ないでしょう?」


勇助くんが口を開くと、そこからは意外な一言。

勇助くんって俺のこと嫌いじゃねーの?あ、でもこの前も普通に話したか。

っていうか予想外の言葉に思わず一瞬素出しちまったじゃねぇか。


「いや、そうだけど俺が貸して貰った方だしー?」


でも俺が貸して貰う側なのだから、俺から返しに行かないと悪ぃじゃん。

そう思い反論してはみたが、次の勇助くんの発言に芯が凍った気がした。


「……先輩って意外と義理堅い人ですね、但馬の時も……」

「そんなことないと思うけどー?じゃあお願いしようかなー」


きょとん、とした表情で俺を見る勇助くんに、俺はそれを笑顔で否定する。


ちゃんと演技しているつもりでも、元の性格ってのは完全には覆い隠せないみたいだ。本当まだまだだな、俺も。


「あ、でも俺明日は放課後用事があるから、すぐいなくなるよー?」

「それなら、明後日の放課後か昼休みに取りに行きます」


でも明日の放課後は会議があるから来られても困る。と最初から釘を刺してみた。

すると勇助くんは素直にそれに頷く。何かこの素直さが怖いって。


「んー了解ー」


俺は勇助くんから上着を受け取ると、早速それを羽織ってみる。

おお、温かい――けど。


「でかいねぇ、一年なのにー」


でかい。

まぁ十センチほど身長差があるから仕方ないか。

袖が余る。指先しか出ねぇよこれ。


「バ、バスケやってますから!それじゃあ!明後日ちゃんと返してくださいよ!」

「え?ゆーすけくん?」


俺は服のぶかぶかさ加減を勇助くんに見せながらあははーと笑うと、勇助くんは何やら動揺したように目を泳がせて、俺の横を通りすぎさっさと上へ行ってしまった。


何なんだアイツ。


俺はちょっとだけ袖を捲くると、再び階段を下り始めた。


――日向は大丈夫だろうか。


まぁ、もし起きていなくてもこの時間なら会長か副会長が転校生を生徒会室へと連れ込むだろう。


俺は日向がきちんと保護されていることを祈った。





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