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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
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委員長は心配性




武蔵と別れた後、パンを口に銜えながら教室へと向かった。


本当は林で食べようとしてたんだが、眠っちまったからな。

行儀が悪いとは思うが食べねーと授業中に腹の虫が鳴るだろう。絶対。


そんなん聞かれたら恥ずかし過ぎる。しかも俺の隣の席は委員長だ。

冷たい目で見られるに決まってる。

うう、考えただけで寒気がするっての。


途中すれ違う生徒の視線が俺に向いた気もするが、んなのは気のせい……だと思いたい。


「髪が……」とか囁き合ってるのが聞こえ、髪を下ろしてるからか、と納得した。

物珍しいからってジロジロ見ないで欲しい。何だか居心地悪ぃ。


まぁ、高校に入ってから人の視線には慣れてはきたけどな。


俺は食べ終わったパンの袋をポケットに突っ込むと教室へ続く扉を開いた。


「おっはよーん」

「甲斐様、おはようございますー!」


教室に入った瞬間いつものメンツが俺を見る。

そして少々驚きの表情を浮かべつつも挨拶をしてくれた。


やっぱりこの髪型変か?下ろしてるだけなんだけどよ。


俺は挨拶を返しながら自分の席へと行き、隣の席に座っている委員長を見る。

委員長は既に次の授業の準備を済ませ本を読んでいたが、俺のことを一瞥したあと、再び本へと目を移した。


「いいんちょーおっはよー」

「おはようじゃない、この遅刻魔が」

「あはは、返す言葉がないねー」


俺がにこやかに挨拶をすると、委員長は本を読む手を止めずにピシャリと言い放つ。返す言葉がない俺は、苦笑するしかなかった。


「――……髪、下ろしてるんだな」


委員長は再び俺をチラリと見ると、髪のことを指摘する。

俺は自分の髪へと触れるとハハ、と笑ってみせた。


「あーそうそう、何か面倒臭くてさー」

「そうか」


それから委員長は言葉を発さずに教員が来るまで本を読み続け、俺はそんな委員長を横目に見つつ、次の授業が始まるのを待った。








「今日は何かあるのか?」


授業が終わり俺は後輩くんの元へ行こうと帰りの準備をしていると、同じく支度をしている委員長が話しかけてくる。


「へ?」


どうして分かったのだろう?と俺は首を傾げた。


「何か急いでいるようだが」


――委員長には俺の様子がいつもと違うことが分かったらしい。


確かにちょっと焦りつつ、ペンケースを鞄に入れたりしてたからな。


「ああ、今から一年とこ行くんだ――S組に」


俺が一年の所へ行くと告げると、委員長は目を丸くした。


「お前分かってるのか――そこには……」

「若狭くんは関係ないよぉ、親衛隊の子に弁当箱返しに行くだけだからさ」


委員長は食堂での一件であんまり転校生くんをよく思ってないしな。

まぁ俺もなんだけど。


「……そうか、一緒に行ってやりたいが……」


いつも吊り上げられている眉はハの字になり、眉間にシワを寄せ委員長は呟く。


委員長は俺を一人で行かせることが不安なんだろう。

俺は転校生くんにあんまり強く物を言えないし。キャラ的に。


俺は笑みを浮かべながら手を上下に振った。


「部活でしょー?大丈夫だってーありがと、いいんちょー」


弓道部の主将は風紀委員の一人で且つ厳しいと有名だ。

部活がある日はサボれないし休めないだろう。それは俺も分かってる。


委員長が心配してくれる気持ちはすっげー嬉しい。けど委員長には迷惑掛けれねーから。


「何かあったら言えよ」

「りょーかい」


委員長はそう俺に言うと、部活へと向かう為教室を出た。

それに続き俺も一年の教室へと行く為に教室を出て階段を上る。


不安と嬉しさが混ざった心を抱えながら。



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