刻まれた印
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「うわー最悪……」
自室の洗面台で俺はがっくりと肩を落とした。
首筋にはくっきりと赤い刻印。所謂キスマークだ。
絆創膏で隠したら怪しいだろうしなー。
それに俺はチャラ男でも、見える所にキスマークは残させないって噂もあるらしい。
まぁ実際男を抱いてないから、キスマークが残るわけがないんだけど。
なのに、今現在俺の首筋にはくっきりキスマークがあるわけで。
「あのホスト教師め……」
何のつもりだったかは分かんねーけど、本当最悪だ。
数学の授業に当分出たくねぇ。
顔も見たくない。
とりあえず明日の午前に数学の授業があった筈だから、それまではここで書類を処理して、昼飯食べてーー
放課後は後輩くんとこと、石見先生のところに行こう。
まぁ、一年S組に上総先生がいたら意味がねぇんだけど。それでも、だ。
他の授業に出れないのは痛いが。
ああ、笛の音が聴きたい。癒されたい。
明日は即行であの木の下へ行こう。弁当の結果も気になるし。
そんでもって明日は髪を下ろそう。絆創膏は不自然だからーーって髪を下ろすのも不自然かもしんねーけど
寝坊したってことで、うん。
俺は首に残された印を何度か引っ掻くと、洗面所を出る。
とりあえず今日は弁当箱を洗ってから、委員長ノートを自分のノートに写すとしよう。
巾着袋と弁当を包んでいた布は、洗濯した方がいいか?
ーーうーん……ま、そのまま返すのもなんだから洗濯するか、洗濯物もあるし。
俺は巾着袋と布を取り、洗濯機がある脱衣所まで行き洗濯機の蓋を開けた。
寮の部屋には洗濯機と乾燥機もついてる、滅多に乾燥機は使わないけどな。
窓の外側に洗濯竿があるから、そこで干せば天気がいい日はすぐに乾くし。
雨の日は部屋干しだ。ーー若干部屋が湿っぽくなるけど。
それにあまり外出をしない俺は洗濯するとしても下着、部屋着、制服のシャツくらいだ。
……なんか自分で言って悲しくなるな。本当に引き篭もりライフだっての。
俺はネットに巾着袋や布を入れると洗濯機に突っ込み、液状の洗剤を入れると蓋を閉めスイッチを入れた。
さぁ、俺もやることやるか。気を取り直して。
俺は腕を天井の方へやり、一度背中の筋を伸ばすと机がある部屋へと向かった。
あ、後でアイロンださねぇと。




