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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
33/106

爽やかくんとの遭遇







「あ」

「あれー?」


俺が昇降口へと着くと、そこには転校生の取り巻きの一人爽やかくんこと勇助くんがいた。


Tシャツに下はウィンドブレーカー。そして額に浮かんでいる汗。頬は薄っすらと赤みを帯びていて。

朝練か何かの帰りだろうか。


爽やかくんは、俺を見て目を丸くして立ち止まってるし。別に俺なんて無視してくれて一向に構わないんだけど。


「ゆーすけくんじゃんー、朝練?」


とりあえず何か会話した方がいいんだろうな、と俺はへらりと首を傾げながら笑顔を浮かべる。


前のことがあるから、あまり顔を合わせたくはないんだけどよ。


「あ、いえ……今日はなくって、自主トレです」

「ふーん」


でも爽やかくんは、肩に掛けているタオルで首元の汗を拭きながら、戸惑いつつも答えてくれた。


朝練がない日も朝から練習ねー、俺にはそこまで熱中するものがないから、素直にすげーって思う。

本当、惜しい奴。


「頑張ってるんだねぇーカッコイイじゃーん」

「は?」

「そういうの、いいと思うよー俺」

「へっ?!」


はい?何だコイツ。

俺が素直に認めて、褒めてるってのに変な声上げやがって。


まぁ確かにチャラ男の俺が笑いながら言ってるから、本気に取れなくても仕方ないんだけど。

しかもさっきよりも心なしか顔が赤くなってるけど、今更体温上昇か?


「な、何言って……」

「あ、いいんちょーだ!それじゃーね、ゆーすけくん」


爽やかくんが何かを言おうとしていたけど、俺は階段の方に委員長の姿を見つけそちらへ向かおうとする。


だって、あんま爽やかくんと話してると周りになんか言われそうだし、転校生がきたら嫌だし。

爽やかくんには申し訳ねーけどさ。


俺はヒラヒラと片手を振るとウィンクを一つ。


ウィンクも特訓の賜物だ。喜美花にチャラ男はウィンクが出来ないと!と特訓させられた。


「あっ……」


爽やかくんが手を伸ばしたのが視界の端に見えたけど、その手もすぐに引っ込められる。

悪ぃな爽やかくん。



俺は小走りで委員長の背後まで迫ると、委員長の肩に腕を置き、背中に覆いかぶさる。


「いいんちょーおっはよー」


委員長はその衝撃をグッと堪えて、キッと鋭い瞳で俺を見た。


「っ……!朝から五月蝿いぞ、甲斐」


怖ぇ怖ぇ。イケメンが台無しだぞー委員長。


「あははー、ごめんごめんって」


俺が口だけで謝ると、委員長はそのまま俺を半ば引き摺る格好で歩いて行く。

そして委員長はふと口を開いた。


「……さっき、話してただろ」

「ん?」

「生意気な転校生の取り巻き」


俺は最初何を言っているか理解出来なくて首を傾げたけど、転校生っていう単語でピンと来る。


「あらー見てたのー?」

「お前は目立つからな」


爽やかくんと話してとこ見られてたのか。

早めに退散して正解だな。他の生徒にも見られてたかもしんねーし。


「まぁ、挨拶だよー挨拶」

「そうか、まぁ別に俺には関係ないがな」


あははと苦笑して見せれば、委員長は眉間にシワを寄せる。――また、不機嫌になっちまった。


「何々?ヤキモチ?大丈夫だっていいんちょーの方が大事だからさー」


多分そんなことはないだろうけど、今の俺はチャラ男だからそれらしく振舞わなければいけない。


俺はぎゅ、っと片腕で委員長の首を抱きしめながら耳元で言う。まぁ俺は上総先生みたいにエロい声なんて出さないけどな。


すると委員長は俺の頭をベシッと叩いた。軽くじゃなくて普通に叩いた。痛ぇ。


「……馬鹿かお前」


俺は委員長を解放すると、叩かれた部分を押さえて「いた〜い」と声を上げるが、委員長はそんな俺を無視してスタスタを廊下を歩いて行く。


見捨てられた……




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