明日の準備
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くっそ。
俺はベッドに鞄を叩き付ける。完全なる八つ当たりだ。
まじでびびったっつの。何とか切り抜けたけど内心ハラハラだったし。
あんな低く響く声で囁かれれば、誰だって腰にくるだろう。
しかも明日もまた上総先生のところに行かなきゃ行けねーって考えると本当憂鬱だ。
はぁ、と俺は一つ溜息を吐くと鞄からプリントを取り出す。
やんなくて呆れられるのもムカつくし。やるしかねーだろ。
机にプリントと筆記用具を置くと、俺は椅子へと座りライトを付けプリントに書かれた問題を一問一問解いていく。
「くっそーぜってぇ終わらせてやる」
数学はそこまで得意じゃねーけど。
心を強く持てば、解けないことはない!と思いてーし。
委員長みたいな頭脳が欲しい。委員長ってば首席だしな。
俺はコツコツ勉強して十位くらいだ。頑張っても五位とか。
生徒会やってると注目度も半端ないから気が抜けない。
顔だけとか思われるのも癪だし。
部屋にはカリカリとシャープペンを走らせる音だけが響く。
時々シャープペンが止まった、っていうのは秘密だ。
そしてやっとプリントが終わり、時計に目をやった俺は、針が差す十一時という時刻を見て愕然とした。
何時間かかってるんだ俺は!
まぁ今日中に終わったからいいとしよう。そうしよう。うん。
夕飯も食べたかったけど、この時間じゃなー。
書類もやりてーし、腹は減るだろうし。
よし、明日の弁当のおかずを作って、それを今ちょっとつまむとするか。
俺はそう決めると部屋を出てキッチンへと向かった。
とりあえず卵焼きは鉄板だよな。あと豚肉があるから生姜焼きにしよう。
あとはほうれん草のおひたしだろ、プチトマトで赤の彩り――後はウインナーだな。
肉が二品になるけどそれは年頃の男だか仕方ないだろ。
とりあえず今は生姜焼きだけ作るか。あとは明日の朝作ればいいし。
俺は豚肉と生姜焼きのタレを取り出す。タレなのは楽だから。サッと炒めればいいしな。
フライパンを熱し、油を適量引くと料理を開始した――
まぁ料理といっても、それ用の豚肉焼くだけだけど。タレかけるだけだけど。
俺は出来上がった生姜焼きを皿に乗せた後、何か足りないことに気付く。
あ、飯炊くの忘れた。
――いいか。おかずだけでも食べられる。ちょっと寂しいけどな。
俺は皿へと箸を向け、生姜焼きを口に含む。
うん。やっぱりタレだから失敗はしないな。
俺は軽く食事を取ると歯を磨き、再び机へ向かう。
今度は書類を処理するためだ。
そこまで切羽詰ってはいないけど、コツコツやった方がいいし。
っていうかいつ書類が大量に来るか分かんねーから。
最近親衛隊の制裁についての報告書が半端ないなー、転校生くんへの制裁なんだけど。
会長らがきっちり風紀に報告でもしてんのか?自分等で処理しろっての。
俺はその書類の目を通すと生徒会の判子を押す。見たぜ、って印。
押すだけなら訓練された猿でも出来るだろうけど、ちゃんと内容にも目を通さねーと意味ねぇし。
……とりあえず、二時までには寝よう。
俺はそう決めると書類をまた一枚取った。




