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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
22/106

knock knock knock







寮の自室へと戻った俺は、自分の机へと向かう。

残った書類を処理する為だ。そりゃそうだ。それ以外やることはない。


最近俺は学校へ行くのと、買い物に行く以外自室から出ていない。何て引き篭もりライフ。

寮にも食堂はあるが行けば転校生くんがいる確率が高いし、あまりお金も使いたくないので専ら自炊だ。


以前なら親衛隊の子と食べることもあったけれど――奢って貰っていたし。なんだか申し訳なくなった。

何人かで割り勘をしていたから、そこまで負担にはなっていなかったと思いたい。っていうか本当申し訳ない。まじで。


寮にはスーパーみたいな所があって、そこで食料を買っている。コンビニよりも食料が豊富だ。ちなみに寮にはコンビニもある。ああ、なんて設備費の無駄遣い。


まぁコンビニは深夜までやってて、スーパーは結構早く閉まっちまうっていう違いもあるけど。


俺はスーパーをよく使ってる。時々寮の入り口に近いコンビニも使ったりするが。スーパーの方が広いし、静かだし。転校生くんは来ないし。


あまり接触をしないよう心掛けているからか、仕事量が多いこと以外結構俺は平和だったりする。……多分。


「よっし、やるか」


自室では演技をしなくてもいいから、楽だ。

滅多に来客もないし。


俺の部屋は最上階でそこには生徒会役員が生活している。下の階が風紀委員フロア。


最上階とその下のフロアは、生徒会役員と風紀委員しか基本的に入っては行けないことになっている。教師は例外。でも教師は教師寮があるので、こちらには滅多に来ない。


一般生徒が入れないこともないが――生徒会役員や風紀委員の同行が必要。


何で転校生くんがこっちまで来ないかってのは、生徒会役員が皆転校生くんの部屋に通ってるから。通い婚かよ。ったく。


最上階まで一般生徒をあげてしまうと、風紀委員が黙ってないだろうし。あんま風紀委員のこと知らないけど。管轄外だから。

まぁ静かで俺はそれでいいんだけど。


俺は時にはパソコンとにらめっこしつつ、そしてまたある時は書類とにらめっこしつつ仕事をこなす。


分かんないとこは後で石見先生に聞こう。俺一人で決められない問題とかもあるし。

ってか顧問と会計しか仕事してない生徒会ってどうよ。最近一般生徒もなんか変だって思ったりしてんじゃね?

でもそれでゴタゴタすんのも嫌だ。仕事増えるし。


「あ゛〜〜目がいてぇ」


最近目が痛い。やっぱり眼精疲労だ。そうに違いない。

パソコンの画面の見過ぎ。ちくしょうこれ以上目が悪くなったらどうしてくれる。

俺は瞼を指でマッサージしながら一つ溜息を吐いた。



「すっげーー!生徒会フロアってこんなんなってんだな!」



……五月蝿い。

ってかこの大声、聞いたことがある。


つーかここまで来れる一般生徒を俺は一人しか知らない。

とうとうやりやがったな会長達。


俺の平穏奪いやがって。ふざけんな。

転校生くんも転校生くんで五月蝿いし。俺の部屋まで聞こえてくるってどうよ。エレベーターから一番遠い筈なのに。(俺は端部屋だったりする)



「おっ、ここの部屋って孝彦の部屋だよな?!」

「そうだよ光、でもここには近付かない方がーー」


聞こえてきたのは転校生くんと副会長の声だ。

別に俺の部屋とか知らないでいいから。本当やめろ。


「孝彦ーー!いんのかーー!」


いきなり転校生くんは――なんと俺の部屋の扉を叩き始めた。

ノックするならもっと静かに叩けよ!この野郎!


俺も俺で出たくない。でも出ない限り転校生くんは諦めない勢いだ。


いんのかーって聞いてるけど、ほぼいると思ってんだろ。

俺の頭で様々な考えが巡る。出るか出ないかどうるすか――


結果俺は髪のゴムを取り、自分のシャツのボタンを全て外し、ズボンの止め具も外して玄関へと向かう。


これしかない。転校生くんを早く退散させる為には――


「なぁにー俺に何か用事ー?」


俺は扉を開くと、そこに体重を掛けて気だるそうな雰囲気を出す。

ちなみに玄関には靴箱からもう一足靴を出しておいた。


「た、孝彦なんて格好してんだよ!どうして?!」


転校生くんや副会長は目を丸くしており、且つ転校生くんは頬を真っ赤に染めていた。

まぁ誰でもそう言うか。この格好じゃ。


「どうしてってー、想像通りだと思うけどー?」


俺の今の設定はこれから情事を楽しむ男――もしくは途中までシてた男。

にこりと微笑むことを忘れないで俺は転校生くんと接する。


「な、何でお前セフレとか作るんだよ!一人に決めないと傷つくのはお前なんだぞ!」


転校生くんは俺を睨みながら言ってくるが、その顔はどこか悲しそうだった。


「若狭くんには、関係ないよねぇ?俺は一人はまだイラナイの、俺の愛って一人には重いしねー」


別に、関係ねぇだろ。てめぇには。ってのが俺の本音。

でもその本音をきちんと口にしつつ、フォローをするのは欠かさない。

何か自分で言ってて寒い。めっちゃ寒い。


「俺なら、受け止めてやるよ!」


真っ直ぐに俺を見て、何てことを言ってくれるんだコイツは。

受け止めてやるってなんだよ。上から目線か、おい。

ふざけんな。別に受け止めて欲しいなんて思っちゃいねぇんだよ。

自分が色んな人に愛されてるからってちょっと調子乗ってんじゃね?


「……はいー?」

「光?!」


俺は首を傾げ、副会長は声を荒げながら転校生くんの肩を掴む。

 

「だからっ……」

「ごめんねー俺、イラナイから、そういうのー」

「孝彦っ!」


とうとう俺は拒絶した。

だって、本当勘弁して欲しいんだよ。


まぁ笑いながら言ったから、そこまで深刻そうではなかったと思う。


「俺もう行かないとー、待ってる人がいるからさぁー」

「ちょ、待てよ……!」


俺は何か言おうとする転校生を無視して、最後まで笑顔で乗り切る。

待ってるのは人じゃなくて書類だけどな!


半強制的に閉めた扉を何度か叩く音がしたけれど、副会長が何か言った声がしてそれは止まった。

うん。副会長良い仕事してくれんじゃん。


それにしても疲れた。この数分でドッと疲れが増しちまった。


俺は一度ベッドへと寝転がると、そのまま眠りに落ちてしまうのであったーー




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