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生徒会会計の憂鬱な日々  作者: とみお
春、崩壊した日常に希望はあるか
20/106

隊長の行動*長門視点



最初に抱いたのは――妬みだった。


正直自分の顔が良いことは、自覚していた。

だから中等部で藤ヶ咲学園に入学した後、生徒会役員に選ばれたのは必然だと思っていた。


高等部に進学しても中等部からの経験と人気から、生徒会入りするものだとばかりーー


まぁ、それは俺の自惚れだったワケだけど。


そう、中等部同じく生徒会役員だった因幡兄弟や日向は生徒会に入っていたのに、同じ学年である俺だけ、一年から生徒会に入ることが出来なかった。


大和会長や、和泉副会長は中等部から生徒会だったから納得出来る。


俺も二人のことはこーっそり尊敬なんてしてたしネー。


しかし、いつもと違うメンツが会計のポジションにいた。


それがーー甲斐孝彦


高等部からの入学者で、その容姿と性格から一年から生徒会入りした人物。


入学式で生徒会役員席に座っている彼を見た時から、その纏う雰囲気に俺は彼から目を離せなかった。


緩く、力が抜けそうになる雰囲気ーーだけどその中には深いものが隠れている、なーんて思ったり。


んで、その後の生徒会選挙で見事彼は会計の座を獲得した。

俺は結構ショックだった。


自分だけメンツに入れなかったってのもあったけど、自分と同じ様な容姿の奴に負けたから。


明るい髪色、ピアス、着崩した制服。

ほとんど要素は同じ筈なのに、どうして彼は一年から生徒会に――

俺ってこう見えて結構負けず嫌いなんだよね。


俺は甲斐孝彦センパイに興味を持った。

だから親衛隊に入ってみた。柄にもなく。


そして俺はーーまず最低なことをした。


親衛隊の人を抱いた。誘い文句は簡単で。


「俺を甲斐サマだと思って抱かれてみない?お互い相手にされなくて寂しいじゃん?」


沢山抱いた。親衛隊のほとんどの人を抱いたと思う。


でも聞けば、皆は甲斐サマに抱かれてないらしい。時折抱かれた!って言う人いたけど、動揺してたから嘘だよね。


そこからは楽に物事が進んだ。俺が一言隊長になりたいって言えばまだ新しい隊長がいなかったのもあり、すぐに隊長になれた。

まー俺セックス上手いし?皆俺のテクに酔っちゃったって感じ?


だから甲斐サマの親衛隊の中には、俺のファン的な子もいるわけ。俺は面倒くさいから親衛隊なんて作らせないけど。


皆が甲斐サマに抱かれてないって聞いてーー変に思ったので、俺は甲斐サマについて調べてみた。


俺の家はそこまでは家柄はよくないけど、情報収集だけは得意なんだよね。

家族構成から中学時代のことだったり、色んなことを調べさせた。


そしてある日ーー


『甲斐孝彦の中学の卒業アルバムのデータを手に入れました』

「お、まじでー?全部送ってよーあ、甲斐サマが写ってるトコだけでいいから」

『かしこまりました』


電話越しに聞こえる声は、俺が甲斐サマの事を調べさせていた親父の秘書のもの。

俺の教育係を昔務めていたので、個人的に頼んだら快く了承してくれた。なんて心強い。

パソコンを開きメールが来るのを待つと、すぐにそれを受信しファイルを開いた。


最初に見たのは個人写真。

黒髪で今よりも短い髪。ピアスも開けていないみたいで、何だか別人。


でも顔つきは一緒だからカッコイイって感じ?でも何だか今よりも凛々しい。

いつもへらへら笑ってるからかなー?って失礼?


そして次に開いたファイルに目を丸くした。

だってあの緩い、軽い笑顔しか見せない甲斐サマが満面の笑みを浮かべていたから。


クラス紹介のページの写真で、小さい男に肩に腕を回されつつも、その男の頭を掴みながら笑っている甲斐サマ。


学校では見たことがない。本当に楽しんでいるっていう笑顔。


他の写真も見ると驚いた顔、ムッとしている顔、子どもの様な無邪気な顔。


色んな甲斐サマが其処にはいた。


親衛隊の人の話を色々聞いてはいるけれど、その話からは全然想像もつかない。

"軽い""緩い""チャラい"って皆が口を揃えて言う甲斐サマが本当はこんなのだなんて。


「ねぇ、甲斐サマの家族構成とかに変わったトコってあんの?」

『いえ、特に――ですが此方側の情報では従兄妹の趣味が変わっていると……』

「変わってる?」


高校生デビューにしても行き過ぎているだろうし。

甲斐サマのアルバムの個人欄から取れる性格からして(好きな言葉は努力、好きなことは読書、節約だった)

自分からこんな変身しないだろーと考えた俺は、周りの状況について聞いてみた。

すると、興味深い答えが返ってきて俺はそれについて詳しく聞く。


そこで、俺は全ての点と点が繋がり――納得した。


高等部から藤ヶ咲へ来た理由も、あんな姿になったのかも、親衛隊を大切にしつつも手を出さないことも。


全部その原因は従兄妹の少女にあったなんて。

従兄妹が腐女子で、そうするように頼まれたってとこだろうねぇ。これは。


そうじゃなきゃ全寮制の学校に男受けするような性格になって入学するわけないし。確率は高いかも。


俺はパソコンの前でニヤリと口の端を上げ、笑った。


「あ、甲斐サマのこと他に調べようとする奴いたらブロックしといてー」

『かしこまりました』

「じゃあねー」


俺は通話の終了ボタンをタップして電話を切る。

一応親衛隊隊長っぽいこともしておかないとね。


ああ、でも。


俺の頭から離れない考えがある。甲斐サマの写真を見た時から、ずーっとずーっと。


もう、やんなるなぁ。







俺は甲斐サマを待った。最近学校を休みがちな甲斐サマが今日学校に来たと、親衛隊の人から聞いたからだ。


寮へと続く道にいれば、よっぽどの事がない限りここを通るだろう。


そして俺の予想通りーー甲斐サマは今、俺の目の前にいる。






……長門視点end




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