爽やかくんは見た*駿河視点
別に意味はなかったんだ。
今日は偶々、体育館の整備があって部活が休みになったからどうしようかなーと、光や武蔵を探しながら廊下を歩いていた時、ある姿を見つけたから。
昼休み、光と話していた生徒会会計の甲斐先輩。
外見に相応しく、彼はセフレが沢山いて毎日日替わりで男を抱いているという噂だ。
そんな男は光に近付いて欲しくなくて、ついつい食堂では睨んでしまった。
光は親衛隊がいる所為で、なかなか本当の友達が出来ない俺を受け入れてくれた初めての人間だ。
どんなときでも一緒にいると言ってくれた光。名前と同じく光は俺にとっての光になった。
そんな綺麗な光には汚い男は似合わない。
俺はこれ以上、光に近付かないでくれと言おうと、急いでいる様子の生徒会会計を追った。
会計は何処に行くんだろう、と思いながら付いて行くと着いたのは選択教室だ。
こんな人通りがないところにどうして?と思ったが、すぐにピンと来た。
ここでセフレと情事に勤しむつもりだ、と。これを風紀に報告すれば会計から失脚するかもしれない。そうすれば、普段他の生徒会役員と一緒にいる光には、近付きにくくなるはずだ。
俺は教室の中の様子を見ようと小さく扉を開け、そこから中を覗き込んだ。
しかし、会計は一人だった。
甘い雰囲気も何もなく、一人で席に座りながら紙を見つめている。しかもその机には大量の紙が積んであった。
会計は素早く一枚一枚紙に目を通し、それを仕分けるように分別していく。
その瞳は真剣そのもので、紙を見る為に伏せられた瞳。それにより分かる長い睫が妙に色っぽく感じ俺はどきっ、としてしまった。
そして会計は艶やかでいて、疲労感を感じさせる溜息を一つ吐くと口を開き、ポツリ呟く。
「ーーったく、何で俺がこんなに仕事してんだよ」
普段とは違う眉間にシワを寄せた不機嫌そうな表情で、普段とは違う口調で。
会計は言い放ったのだった。
俺は動揺したのか、扉に額をぶつけてしまい音を立ててしまう。
それに会計も気付いたのか、目を丸くしながら俺の方を向き、俺の姿を把握すると彼は不敵な笑みを浮かべた。
何処か妖艶なその笑みに、俺はまた一つ大きく鼓動を鳴らす。
どうして、こんなにドキドキしてるんだ。俺。
駿河side......end




