委員長の怒り*委員長視点
馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿大馬鹿。
俺は心の中で最近コイツに馬鹿としか言ってないかもしれない。
だが今回は馬鹿の上の大馬鹿だ。格上げだ、喜べ。
何であんなに良い様に言われて黙ってるんだ。
気色悪いだの。その笑いをやめろだの。
腹が立たないのか、コイツは。
ずっと横目で見ながら食事をした俺も限界だった。
何も知らないくせに。
コイツの事を何も知らないくせに言われるのに腹が立ったんだ、俺は。
自分だけが知っていればいいと思っていながら、人にコイツを悪く言われるとむかつく。
しかし俺に手を引かれてるコイツは、ニヤニヤと締まりのない笑みを浮かべている。
……これが、本当の気色悪い笑みだ。
「何でそんなに笑ってるんだお前は」
俺は人通りがない階段下に着くと手を放し眉間に力を入れながら軽く甲斐の頭を叩く。
ペシッと良い音がしたが、それでもコイツは「だってさー」と笑ったままだ。
「いいんちょーってさ、俺のこと結構好きだよねぇー」
……は?
な、何言ってるんだコイツは?!
ずれた眼鏡を直すのも忘れ、俺は目を見開き甲斐を呆然と見る事しか出来なかった。
「俺のために怒ってくれたでしょー?」
「別に、お前の為じゃない俺が腹が立ったからだ」
「うんうん、まぁ別にそれでもいいけどねー」
甲斐は頭を傾け、にこりと笑った。いつもみたいな軽いだけの笑顔じゃないのが俺にも分かる。
心底嬉しいと思っている笑顔だ。
いつもとは違うソレに、鼓動が速まるのを感じる。
俺は眼鏡を直し、その笑顔を直視しないように目を甲斐から逸らした。
「俺は嬉しかったんだよーありがとね、いいんちょー」
ぽん、と肩に手を置く甲斐。
触れられた部分が妙に熱く感じて俺は調子に乗るなとまた甲斐の頭を叩き、教室に戻る為階段を上り始めた。
甲斐は頭を押さえながら暴力はんたーいと言うも俺を追い階段を上る。
後ろから聞こえてくる足音に優越感を感じながら俺は口の端を上げたのだった。
委員長side......end




