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4.家族で晩餐


「うわあ!すごい御馳走!!」


久しぶりに実家に帰り、家族で夕食を食べることになったため、ダイニングルームに向かうと、そこには美味しそうな御馳走が並んでいた。



「料理長が昨日から張り切ってメニュー考えてくれたんだよ。みんなルーナの帰りを待ってたからね!」


「ありがとう料理長さん!私の好物ばかり!」



豪華すぎるほどの御馳走は、どれも私の好きなメニューだった。


バイキング形式で並べられた料理に思わずはしゃいでいると、調理スタッフと料理長が嬉しそうにこちらを見ていた。


見られていたことに恥ずかしくなり、大人しくすると、


「お嬢様、すごい痩せられたんですから沢山食べてください。」


料理長が心配そうに言葉をかけてくれる。


その言葉に後ろにいるスタッフも全員が頷いていた。



フォルディナント家で働いてくれている人達は昔から暖かい人達ばかりだ。


今日も突然帰ってきたのにもかかわらず、皆んながおかえりなさいと声をかけてくれた。

実家の暖かさと優しさに思わず目頭が熱くなり、泣きそうになった。



「たくさんいただきますっ!」



大きな声でそう言い、御馳走をたくさんお皿に取っていく。


こんなにも美味しそうな料理を用意してくれたんだから、我慢せずたくさん食べるぞ。

隣でルーカスが、姉さん取りすぎだって…と呟いてくるけど気にしない。




御馳走をたくさん食べながら、久しぶりの家族の団欒を楽しむ。


会えなかった3年間の話や昔の話で盛り上がる。

お父さんはお酒を飲んでいるせいか饒舌になっていた。



そして1時間経った今、お父さんは泥酔状態になっていた。



「会えなかった3年間の間に…ルーナはすっかりレディになって……ちょっと前までこんなに小さかったのに、子どもの成長は早いなあ…うう…」


「お父さん、今日泣きすぎだよ笑」


「家族が再び集まれたのに感極まっちゃって…ラーナスも天国できっと喜んでくれてるんだろうな。」


お父さんはお酒に酔うと、昔からお母さんの話をする。


出会った時のこと、恋した瞬間のこと、私やルーカスが生まれた時のことなど聞いていない話はないくらいだ。

周りから再婚を勧める声が絶えない中、ずっとお母さんを一途に想っている。


お母さんが亡くなってから、私やルーカスをここまで男手一つで育ててくれたお父さん。



公爵としても忙しく働きながら、私やルーカスに寂しい思いをさせないようにと、毎日一緒に遊ぶ時間を無理やり作ってくれていたことを知っている。


それなのに、私はわがままを言って満月の塔に行かせてもらった。


更に3年間も帰ってこないで、こうしていきなり帰ってきて……お父さんには一生頭が上がらない。







「そういえば今年、殿下も成人の儀を行なっていらっしゃったなあ。」




“殿下”




何気なくお父さんが話した、殿下という言葉に思わず反応してしまう。



「殿下も大きくなられて…今じゃ他国でも名前が知れ渡って、“銀の竜神”なんて呼ばれて…「父さん、酔いすぎ。」



私の動揺を感じとったのか、お父さんの話をルーカスが遮る。

思わず少しホッとしてしまう。


「悪い悪い。どうやら飲み過ぎたみたいだ。そろそろお開きにした方が良さそうだな。」


「大丈夫?お父さん、よろけてるけど部屋まで戻れる?」


完全に酔いが回ってる状態で、上手く立ちあがれていない。


「父さん、部屋まで送るよ。…料理長、父さんの部屋に水を持って来てくれると助かる。」


ルーカスが酔ったお父さんを支えて部屋まで送ってくれるらしい。

昔から頼もしいが、更に頼もしくなった自慢の弟だ。


…さっきの殿下の話で動揺したのもバレてたようだし。



「じゃあ、ゆっくり休んでね姉さん。」


「ありがとうねルーカス」


「ルーナ!久しぶりの実家なんだからゆっくり休むんだぞ!」


「お父さんもゆっくり休んでね!おやすみなさい」




おやすみと2人に挨拶をし、解散した私は…3年ぶりに自分の部屋に向かった。








久しぶりに入った自分の部屋は、3年前と同じままだった。




“殿下”




お父さんから話を聞いたからだろうか、私は思わず自分の部屋の机に向かい、鍵付きの引き出しに入っている小さい箱を取り出す。


指輪の箱だ。


少し震える手でその箱を開ける……中身は空っぽだった。



「…中身がないんだから捨てればいいのに…捨てられないんだよね…」



そう思わず1人で苦笑する。


「初恋だったからなぁ…」




3年前、長い長い初恋に終止符を打った。



殿下が…ジェイドが好きだった。



本気で恋をしていた。

……長い長い片思いだった。




しかし、3年前のあの日、私は…殿下に恋することを辞めた。


後悔はない。

もう終わったことだ。




箱を閉めて、再び机の引き出しに戻す。




大丈夫。


ヴェルヘイン王国に帰ってきても…もうあの頃とは違うのだ。



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