天神 -神族について-⑥
何という事だ。
『全知全能』とは文字通り、あらゆる力、事象を顕現する事が可能だ。なのに時を止められるだけの『天族』に手も足も出ないとは・・・
「セイラム・・・貴様は・・・何という事をしてくれたのだ?」
気が付けば『神族』は全てばらばらとなって地面に転がっており、動いているのは自分だけになった。
今まで彼らを崇め、恩恵を授かって来た人々は崩壊の一途を辿るだろう。祈りを捧げられる対象はザジウスだけになってしまったのだから。
「元凶であるこいつを殺さねば同胞が浮かばれない。ア=レイよ、私が無理ならせめてお前の手で屠る所を見せてくれないか?」
「本当に血の気が多いな。そもそもザジウスが『天族』を生み出していたのだからお前達は親子同然だろう?もう少し仲良くしたらどうだ?」
「・・・・・貴様・・・言うに事欠いて親子じゃと?!こやつらは『神族』の娯楽道具に過ぎん!!二度とそのような事を口にするな?!」
完全に舐められている。
それが腹立たしくて仕方がないのだが今のセイラムは『天族』の域を軽く超えているのだ。ザジウスが全力で殺そうと力を解放していたにも拘らず、奴はこちらの攻撃を全て躱しながら他の『神族』全てを斬り捨てた事実が確たる証左だろう。
「わかったわかった。さて、それじゃ帰るとするよ。」
更に耳を疑う言葉が出てきたので唖然とするしかない。
「帰る?帰るじゃと?」
「ああ。もうここに用はないからね。」
そんな馬鹿な。奴はザジウスに興味があると言った。ヴァッツの力に染まっている自分に。なのに何故帰るという話になるのだ?
「・・・どうあってもわしと戦わんつもりか?」
「君は光に攻撃を当てられるのかい?」
彼自身は全く戦う気が無いらしい。確かにザジウスが勝てる可能性は相当に低く、むしろ命を拾ったと内心喜ぶべきなのかもしれない。
だがそれは長として、同胞達を失った者として認める訳にはいかないのだ。
自分達は世界から崇められる存在、神なのだから。
「・・・良いじゃろう。であれば全て消し去ってやる!!」
光と言うのは『神族』にも馴染みが深いものであり、ザジウスも様々な用途で使ってきた為制御程度なら容易い。ア=レイがもし光の化身なら言う通り、全てを消し去ってやろうではないか。
そうすれば奴も戦わざるを得なくなるか、この世から消えてなくなるだろう。
やっと光明を見出したザジウスはア=レイを睨みつつ右手を上にかざすと明るかった世界は一瞬で暗くなる。
ただこれでは太陽を沈めただけだ。空には未だ星々が眩い光を放っていたので彼はその全てを破壊するだけでなく、分厚く大きな雲で世界を覆ってしまった。
「・・・どうじゃ?これで貴様の力は弱体化したじゃろう?」
「弱体化ねぇ・・・ま、満足出来たのならそれでいいさ。ではまた会おう。」
「待てぃ!!逃がすかっ!!」
劣勢に陥った時、相手に焦りを見せないのは基本中の基本であり、猛者であればある程それが上手い。つまりア=レイも全く様子を変えていないだけで現在はこちらが相当優勢な筈なのだ。
なのでザジウスは今度こそ、この憎たらしい存在を破壊する為に全力で拳を放つ。それこそ世界が消滅する程の力を込めた一撃を。
すぅっ・・・・・
ところが自身の拳は先程と同じように空を切ってしまった。目の前にはその姿を捉えているというのに。
「・・・そんな馬鹿な・・・」
光を奪うという発想は間違いだったのか?それとも彼の言う通り、本当に光自体を攻撃せねばア=レイには届かないというのか?
「うんうん。一杯悩むといい。時間はたっぷりあるのだろう?」
そう言いながらとても満足そうな笑みを浮かべて消えるア=レイとは対照的に、絶望を突き付けられたザジウスは何故かセイラムと共に取り残されるのだった。
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