天神 -神族について-⑤
思わぬ形で『神族』が一つとなったのも束の間だ。
ヘル=ラーも戦斧をまだ使用出来ると判断したのだろう。それを振りかぶって距離を詰めるとザジウスは拳を、ソ=ノ=フォウドも炎の槍を、他にも雷や風といった攻撃がセイラムを襲うが以前とは比べ物にならない動きで全てを躱しつつ、丁寧に反撃を放ってくる。
しかもその一撃には想像を絶する力が込められているらしい。
まるで瞬間移動でもしてるかのように各々の至近距離に移動すると『神族』達は驚く間もなく両断されては地面に堕ちていくのだ。
(・・・これは悪夢か?)
『神族』は人間など比べ物にならない程丈夫な種族であり、腰断されようとも治癒や蘇生ですぐに復帰出来る。なのに何故こうも劣勢に立たされているのだ?
認めたくはない。
ア=レイに見放された事、セイラムが自分達以上の強さを保持している事、未だに己の左腕が元に戻らない事などなど、考えだしたらきりがない。
ただ、そのどれもが『神族』達の圧倒的劣勢を物語ってしまう。このままでは本当にザジウス以外が消滅してしまう。
「・・・おのれぇ・・・たかが『天族』の分際でぇ・・・燃え尽きろぉぉっ!!!」
ならば考えるのは後回しだ。今は全ての力を使ってでもこの苦境を乗り越える。その為にソ=ノ=フォウドは巻き込むのを承知の上で『神界』を炎で包み込むと同族達にも決死の覚悟が伝わったらしい。
各々が命を懸けてセイラムに攻撃を仕掛けるという過剰な立ち回りは自分達の世界すら破壊してしまうだろう。
だがそれでもやらねばならないのだ。自分達の命と傲慢を護る為に。
「よかった・・・貴様らが愚かで本当によかった。」
それにしても何故ここまで攻撃が当たらないのか。『神族』達の人智を超える力は多少躱した所で避けられる筈もないのに何故だ?
防いでいる素振りもなく、何やら意味の分からない事を呟く声色から息を切らしている様子すらない。
ア=レイの加護を受けていると考えてもこの差はそれこそ人智を越えている。
「これなら慈悲をかける気持ちすら湧く事はない・・・感謝するぞ。」
退屈しのぎに作られた存在にここまで追いつめられるなど屈辱以外の何ものでもない。周囲もそれを強く理解しているのだろう。
今までに出した事がない程本気の力で立ち向かうが、どれだけ巨大な攻撃もまるで通り抜けるかのように躱して距離を詰めてくる姿には恐怖と絶望で頭が真っ白になる。
「・・・そうか!貴様、時を止めておるな?!」
そのからくりに気が付いたのは生みの親で自身も同じ能力を持つザジウスだ。ただ、セイラムのそれは『天族』以下の生き物に制限されている為、『神族』に効果はない筈だった。ア=レイの手により再誕するまでは。
「気が付いた所で何も出来まい?」
しかし今は間違いなくこちらの動きを止められているらしい。発言のやり取りの後、2人の姿が頻繁に消えている事からザジウスだけは追いついているようだが同族達は成す術もなく、両断されては地面に堕ちていく。
「・・・ザジウスッ!!貴様の玩具だろう?!さっさと止めろっ!!」
こうなるとこちらの攻撃が当たる事を期待するより、近づけさせない事を優先すべきだ。ソ=ノ=フォウドは叫びながら自身の視界さえ遮って自らの身を巨大な火柱の中心に置くとその状態で様子を探る。
一体ア=レイはセイラムにどれ程の力を授けたのだ?まさか『神族』が『天族』如きにやられはすまい?
ヴァッツから力を奪われた時以上の不安が胸中を駆け巡るがこちらには『全知全能』を持つザジウスがいるのだから一方的な負けはない。
そう心の中で言い聞かせていたのだが、本来斬られる筈のない炎の化身は光の長剣によって見事に両断されると彼は意識と命を同時に失いつつ、他の同族達と同じように地面へ堕ちていくのだった。
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