天神 -神族について-④
セイラムが再誕し、自身に襲い掛かって来たのをア=レイは楽しそうに見物している。という事は今更確認する必要はないのかもしれない。
「・・・ア=レイよ。この場合処理するのはザジウスだけで良いのではないか?他の『神族』は貴方に忠誠を誓う筈だ。」
「はっはっは。逆だよ、逆。ザジウスは私よりヴァッツの力に染まっている。それを詳しく調べたいんだ。他に興味は無くなった。」
切り替えの速さは傲慢のなせる業なのか。遠回しに不必要だと言い渡された『神族』達は驚愕を覚えるも、ア=レイの様子から戦うのは『天族』一人だけらしい。
であれば多少強くなっていた所で自分達が負けるなど有り得ないのではないか?
「たかが戦奴の分際で面白い。」
そこに名乗り出たのは他でもない、『戦神』ヘル=ラーだ。彼は革命軍として共に行動してはいたものの満足にその力を振るえる機会が無かった。
というのもザジウスが戦いに特化し、戦う事に至上の喜びを見出す彼と真正面から衝突するのを避けていた為だ。
理由などどうでも良かった。十全に戦う環境が整えば大義名分など必要なかった。
それを同族達も知っていたから手も口も出さなかったのだ。恐らく彼が戦えばいくらア=レイが復活させた『天族』であろうとも一瞬で肉塊と化すだろうと。
ところがセイラムは怯む様子もみせずに一瞬で間合いを詰めたのでヘル=ラーも自身の体程もある戦斧を顕現しつつ、両手で大きく振りかぶる。
この戦いが終わったらどう立ち回るべきか。
同胞の勝利を確信していたのは本人も含めて油断でも何でもない。それくらい戦いにおいては彼と比肩する者など存在しなかった。
だからソ=ノ=フォウドだけでなく、他の『神族』も次の行動について考えていたのだが、セイラムの光る長剣が巨大な戦斧と数十もの衝突を繰り返した後、全員が一筋の光を見る。
するとザジウスですら破壊が困難だと言われていたヘル=ラーの戦斧が綺麗に割れたのだから驚愕するしかない。
更にその剣閃は彼の体にもしっかり走っていたらしい。右肩付近にゆっくり縦傷が開くとそこから少量の出血が見て取れた。
「・・・やるな?」
本人にはまだ余裕があるようだが大丈夫だろうか?
やっとア=レイが蘇らせたという『天族』に僅かな危機感を覚え始めたのだが次にはそれを超える驚愕に襲われる。
「ア=レイよ。私にザジウスを殺す許可を。奴こそが『神族』の元凶なのだ。」
何と、セイラムは眼前に立つヘル=ラーを無視するかのような発言をしたのだ。この不遜すぎる態度には周囲からも大きな怒りが渦となって奴に向かい出すが相手は全く気にも留めていない。
「駄目だよ。彼は実験体として私が使うんだ。他なら全部殺していいから我慢しておくれ。」
かつてこれ程の屈辱を受けた事があっただろうか。
様々な世界で崇められてきた『神族』達。それを前に敬意や畏怖を抱く事無く好き勝手に言われては培われてきた矜持が許さない。
「・・・面白い。わしを実験に使うだと?!やってみるがよい!!」
それは当事者も同じだったらしい。いや、当事者として扱われたからこそ最も激高しているのだろう。
放っておけば自身の命だけは確実に助かる筈なのに『神族』の長として看過出来なかったザジウスがセイラムに襲い掛かると、周囲も不遜の極みである『天族』に攻撃を仕掛け始めた。
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