天神 -神族について-③
「わしの中にヴァッツの力か・・・面白いな。」
「はっはっは。全く面白くないよ?」
何故ア=レイが突如姿を見せたのか。ザジウスの中に宿るヴァッツの力を確認してどうするつもりなのか。
誰もがその理由を知ろうと様子を見守っているとア=レイが僅かに感情的な言葉を漏らした後、突如雰囲気と空気を一変させる。
「息子の成長には期待している。ただ私の興味に水を差すような行動は感心しないね。」
「・・・だったらその息子と親子喧嘩でもしてくるが良い。そしてもう二度とここには来るな。よいな?」
まさかこれで終わりなのか?
やっと現れた救世主が何の活躍もなく帰ってしまうかもしれない可能性はソ=ノ=フォウドを絶望させるには十分すぎた。
せめて『神界』の平定を手伝ってはくれないだろうか?この目の上のたん瘤である老人だけでいい。彼だけを処してはもらえれば後は何とでもなる筈だ。
今まで世界中の人間から崇められ、懇願されてきた自身の立場も忘れてつい願ってしまうとそれが届いたのか、ア=レイは再び優しい笑顔を浮かべ直す。
「仕方がない。私の興味が失せた部分だけは処理、いや、少しは楽しませてもらおうか。」
おお!やったぞ!
新たな『神界』を画策していたソ=ノ=フォウドは思わず喜びの声を上げようと思ったが未だに許されていないらしい。それでも久しぶりに感じる高揚を何とか形に表したくて、驚愕を浮かべるザジウスに勝ち誇った笑みを向ける。
「・・・よいじゃろう。貴様とはいずれ戦わねばならぬと思っておった。」
「私と戦う?高慢なのは知ってるけどもう少し考えてから発言して欲しいね。」
実際の所、ア=レイはどれ程戦えるのだろう。ザジウスから『神族』の力を元に戻したのが彼だと聞いていたが力の全容については誰一人理解していない。
それでも敵だと認識してからの行動は早かった。
ザジウスの枯れ木のような右腕から星を軽く粉々に砕く拳が目で捉えられぬ速さで放たれる。流石にこれを食らえば多少の負傷は免れないか?
再び踊る心を抑えつつ、戦果を見定めようとじっくり観察してみるがア=レイの体には傷一つ走っていない。いや、それどころかザジウスの拳は彼の体を通り抜けたようだ。
「む?!幻か・・・」
「いいや。君の力じゃ私に触れる事さえ出来ないだけだよ。さて・・・折角だ。君達と因縁のある男を再構築して全てを任せようじゃないか。」
ヴァッツの父と名乗り、『神族』の力でさえも奪ったり戻したり出来る存在の考える事など理解出来る筈もない。
ただア=レイが閃いたといった表情から軽く右手を左から右へ振っただけで、眼前には以前見た『天族』の長が姿を現したではないか。
「さぁセイラム。今回は君の恨みを直接晴らす機会を与えてあげよう。思う存分戦うがいい。」
生命を生み出す事ならザジウスでも可能なのだから別段驚くほどのものではない。
しかし今回その力を行使したのはア=レイであり、生前と変わらぬ姿形をしているセイラムもザジウスが生み出した時とは比べ物にならない力を保有している可能性は考えるまでもない。
「・・・貴様らに覚悟はあるか?神から再誕を許されたこの私と戦う覚悟が。」
本人もその力を感じているのだろう。
以前ヴァッツと共に『神界』へ足を踏み入れた時とはまた違った自信を漲らせている事からも、それが読み取れる。
「・・・やはり忌々しい存在じゃな。ア=レイよ。」
「はっはっは。誉め言葉として受け取っておくよ。」
一体どのような戦いになるのか。誰しもが妙な期待から遠巻きに2人を眺め始めるがセイラムの力は『神族』が思っている以上のものらしい。
ざむんっ
更にその刃が自分に向かってくるとは思いもしなかった。ソ=ノ=フォウドの左腕が綺麗に切断された事でやっと事態を飲み込むと無意識に体を炎へと変化させていた。
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