天神 -備えあれば患いなし-⑧
彼が戦いを好まないのは良く良く知っている。だが侵攻の気配がある今はそんなぬるい事を言っている場合ではないのだ。
特に相手が相当な猛者なのもわかっている為、出来ればヴァッツにしっかり動いてもらいたい。情けない話だが自分達が命を懸けて戦うよりよほど安全で確実な戦果を得られる筈だからだ。
そんな重圧とも呼べる問いかけをショウやクレイスも感じ取ったのだろう。彼らも息を飲むようにヴァッツの様子を静かに見護っていると俯いていたヴァッツが真剣な面持ちを浮かべて静かに立ち上がる。
「・・・もし、オレがもう力を全く使えない。戦えないって言ったら・・・皆オレの事を嫌いになる?」
そうか。そうだったのか。
『天界』から戻ってきて以降、全く元気がなく、ア=レイとの関係性すら周囲に伝えられなかったのにはそんな理由があったのか。
「そんな訳ないでしょ!!ヴァッツはずっと僕の憧れで・・・大切な友人だよ!!」
それにいち早く気が付いたクレイスは勢い良く立ち上がり、謝罪の意味も含めて声を張るとやっとヴァッツから力ない笑みが零れた。
周囲の期待を背負っていた為にずっと打ち明けられなかったのだろう。そんな苦しい思いに気が付けなかった悔しさは皆同じなのだ。
「クレイスの仰る通りです。私達は貴方に何度救われたかわからない。ですのでこれからは私達が貴方の為に全力で動きましょう。全力でね?」
ショウも冗談っぽく言っていたが恐らく本気だ。彼は全ての権限を行使してでもヴァッツを護り通すつもりだ。
「・・・やれやれ。やっと教えてくれたか。だったら俺も命を懸けて護り抜くと誓うぜ。この国とお前達をな。」
「ええ~・・・カズキの命懸けって本当に命を削りそうで怖いな・・・」
「おい?!毎回瀕死で戦ってるお前にだけは言われたくないぞ?!」
どうやら何とかなりそうだ。わだかまりも消えて久しぶりに4人が声を上げて笑い合うとカズキもこの場を設けた事に間違いはなかったと安堵し、頼りになる友人らを誇りに思う。
「クレイス、カズキ、ショウ、ありがとう!じゃあ・・・もう1つだけ伝えておきたい事があるんだけどいいかな?」
やっと心が一つになった。だからヴァッツも抱えていた問題を相談してくれるのだろう。誰もがそう考えていたのでカズキはつい早とちりしてしまう。
「何だ?お前の親父についてか?」
「あ、それも言っておこうか。あいつはオレの事息子?だって言ってるみたいだけど正直オレは父親だって思ってないからね?」
「ほう?しかし『神族』に力を戻すなど、その本質は貴方にとてもよく似ていますよ?」
「いや、力が似てても今まで全くヴァッツに関与してこなかったんだよね?そりゃあいきなり現れて父親ですって言われたら僕も敬遠しちゃうな。」
「だよね!!だからあいつに関しては・・・う~ん・・・ショウ、何かいい案があれば教えて?」
まさかここに来て相当な無茶振りをされるとは夢にも思わなかったのだろう。先程全力で動くと言った手前、目を泳がせながら彼らしからぬ自信のない返事が垣間見えると部屋では再び明るい笑い声が木霊した。
「皆、本当にありがとう。でね、オレが伝えたい事はもう1つ。皆には言えない事があるんだ。」
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