天神 -神々の復讐-⑤
「ま、またなの~~?!もうやだぁ!!男達の慰みものになるのはやだぁ~!!!」
「わ、わかったわかった!そんな事はせんから大人しくついてこい!な?!」
ヴァッツから一斉に力を奪われた『神界』は悲惨だった。人間と同等の力しか持たなくなった事で上下関係と秩序が一瞬で崩壊すると若く逞しい男達が一気に台頭し始めたのだ。
彼らにもある程度の心はある。だが立場的に抗えなかった不満や欲望に火が付くと『神族』全員が持つ傲慢かつ嗜虐的な性格と相乗効果を生んでしまった。
細枝のような手足しか持たない女が自分の腰ほどもある太い腕の男から迫られても抗える筈もなく、美しい女ばかりの『神界』ではほぼ全員が慰みもの、強姦の対象となっていくのも仕方のない事だった。
そんな中イェ=イレィだけはヴァッツの助力により救われた訳だがイラは違う。ア=レイが皆に力を戻す最後の日まで何度も何度もその体をこき使われたのだ。
故に『神族』の中でも彼女に嫉妬する者は多く、特に羨望と怨恨を抱いていたのがイラという訳だ。
「面白いな。つまり神を名乗っていた女はただの女に成り下がった訳だ。その大槌、益々欲しいぞ。」
「だからア=ディラファ、それは俺らには使えないんですって。」
しかしヴァッツがとんでもない存在だというのは知っていたが、まさか彼の作った武器にも破格の能力が宿っているとは夢にも思わなかった。
再び人間と成り下がったイラは見た目通りの少女のように泣きじゃくる中、ワーディライに優しく手を引かれながら彼の館に通されるとまずは暖かい牛乳を用意される。
「・・・わかった。これで毒殺する気ね?」
「そんなまどろっこしい事をする筈がないじゃろ。お前さんはこいつらと同じ捕虜じゃ。なので捕虜らしく扱う。それで元気になれば尋問という流れじゃ。わかったな?」
「・・・尋問って酷い事するつもりでしょ?」
きっと知っている事、質問された事を全て話した後も嗜虐心を満たす為に様々な方法で痛めつけたり快楽の道具としてまた使われるに違いないのだ。そう考えると再び双眸から大粒の涙がぽろぽろと零れるが何度試してもそれが海になる事はない。
「心配するなよ。俺達もただ知ってる事をしゃべった後は軽い軟禁状態なだけだ。お前さんが考えてるようなことはない、と思うぜ?な?」
「うむ。そもそも英雄王が軟禁される理由もない。我は我の意思でこの地に留まっているだけだ。」
最後には同じ捕虜である筈の彼らにも慰められると再び涙が止まらなくなる。この先の事を考えると明るい未来など絶対に期待できないのだから。
「・・・・・ど、どうしてこんなことになったんだろ・・・わ、私はただ、イェ=イレィを殺したかっただけなのに。」
「い、いやぁ・・・それが大きな原因ではないか?彼女にはヴァッツの息がかかっておるからの。それに手を出せばいずれ無力化か命を奪われておったと思うぞ?」
そうなのか?
一国を任す為だけに適当に選ばれたものだとばかり思っていたが、破格の存在からそれ程目を掛けられていたとなるとワーディライの言葉にも納得が行く。
「ともかく今日は休むが良い。敵対行動さえ取らねばわしらが乱暴を働く事はないからの。」
また普通の人間になってしまった。そして再び力を取り戻す事は叶わないかもしれない。そう考えると彼の妙な優しさも相まって三度涙が滝のように零れて来るのだがそこで限界を迎えたようだ。
今までこれ程体力を消耗した記憶のないイラは泣き疲れからいつの間にか泥のように眠ってしまったらしい。
暖かく柔らかい羽毛布団の中で目覚めた時、これからの事を考えるよりも先に意識は扉の向こうから感じる美味しそうな匂いに惹かれるのだった。
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