天神 -神々の復讐-④
「あっはっはっはっはぁ~!!やっぱり人間って愚かねぇ?!海の化身である私にそんな原始的な武器で立ち向かおうだなんて!!」
作戦が水の泡と化したのであれば遠慮はいるまい。最後まで神である自分に一切の敬意を払わなかった事も相まって苛立ちが限界だったイラは高笑いしながら周辺全てを飲み込もうと更に波を高くして見せる。
これでどうだ?神の前に跪くか?
『ダブラム』という国を水没させる事など造作もないがそれだけでは気持ちが収まらない。
出来ればその前にこの傲慢で鈍感な老人の心をへし折ってやりたい。後悔と苦渋に満ち溢れた表情が見たい。何度も何度も命乞いをさせたい。
それらを一通り満喫してから海に沈めるのだ。彼らから向けられる絶望と怨嗟を一身に受けながら。非常に良い。想像しただけで悦びから体が震えてくる。
「相手を殺さなければわしの期待に応えてくれるはず・・・頼むぞ。大槌よ!!」
しかしワーディライは未だイラの想像する行動をとってくれない。それどころか自分の武器に何やら語り掛けるような素振りまで見せだした。
もしや恐怖で混乱しているのか?ならそれはそれで面白いし嗜虐心がそそられる。イラは豆粒のように小さくなった人間達を見下ろしつつわくわくしながら様子を眺めていると有り得ない現象が起きた。
何と、大きめではあった彼の大槌が一瞬で波と同等の大きさに膨らんだかと思えばそれは黒い鯨の形となり、大きな口を開けてイラごと一飲みにしてしまったのだ。
「あんぎゃあああ?!」
とりあえず本能のまま情けない叫び声を上げるしかなかった。そして気が付くといつの間にか地面に這いつくばっており、呼び寄せていた海水と巨大すぎる鯨が霧散していたのだから開いた口が塞がらない。
「・・・ど、どうなってるの?!」
「むっふっふ。流石はヴァッツが与えてくれた武器じゃ。わしの想像を遥かに超えて活躍してくれよる。」
まさかとは思うが今ワーディライの手に収まっている漆黒の大槌が大津波を無力化してしまったのか?大陸の半分を沈められる程の海水をあの一瞬で?
「ヴァッツ・・・といえば私達から力を奪ったあの?」
「うむ。貴様ら『神族』が何を企んでおるのか知らんが悪い事は言わん。この世界に干渉せん方がええ。でないと死より恐ろしい目にあうぞ?」
おかしい。本当ならこの老人が地面に這いつくばっていて、自分が彼のように相手を見下ろしている筈なのに何故こうなるのだ?自分は『神族』だぞ?力も取り戻して十全の状態だというのに?
考えれば考える程納得にも理解にも遠い。だがそれは恥でも何でもない。ヴァッツという破格の前には生物などその程度なのだ。
「・・・そうだ。私は海を司る神・・・ありとあらゆる世界の海が私の力そのものなんだからっ!!」
もういい。イェ=イレィへの執着は止めだ。
自身の誇りを甚く気付つけられたイラは力のすべてを解放して相手が行動する暇を与える前に大陸を飲み込む。
「あっはっはっはっはぁ!!あんた達みたいなゴミに私が頭を垂れるなんて!!退くなんてありえないんだからぁっ!!」
こうなると勝利は約束されたも同然だ。体中から気持ちの良い海水を感じながら高笑いすると3人も驚愕を浮かべている。しかし後悔は先に立たないのだ
「・・・なんじゃ?攻撃を無力化された事で頭がおかしくなったか?」
「俗物ならよくある事だ。しかし・・・やはりその大槌は素晴らしいな。是非我に献上するが良い。」
「ア=ディラファ、それは俺達に反応してくれないのは何度も試したでしょ?」
世界が海に沈みゆくというのに悠長にしていられるのは既に死を悟っているからだろう。そう思って寛大な心で聞き流していたイラだが何やら様子がおかしい。
「・・・あれ?海は?」
「本当に何を言っておるんじゃ?」
ふと我に返ると周囲は海どころか自分の体すら海と化していない。むしろ体内から感じていた海水はただの脈動だったとわかった時、自身が再び力を奪われた事への絶望感からその場で大泣きし始めるのだった。
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