天神 -神々の復讐-③
「何じゃ貴様は?」
その一言で流石のイラも理解する。どうやらワーディライという男はこちらを正しく認識していないらしい。ただいらぬ問答を始めれば余計に威厳が損なわれる事くらいは知っていた。
「・・・貴方は『悪魔』を討伐する運命にあるのです。」
なので相手の様子はさておき、短く神託を告げてみたのだがその表情から感じられるものは何もない。
「おお!!神が我らの前に降臨されるとは!!悪くないではないか!!」
それよりも周囲にいた2人の方が敬う姿勢を見せている。素性はわからないが、であれば彼らの敬意をより高める事でワーディライを感化させてみよう。
そう思って今度は背中から10もの翼を顕現させると2人の表情だけは喜色に染まり、静かに跪いたでのでイラは心中でほくそ笑む。
この価値観はどんな世界でもある程度共通するらしい。
全く理解に苦しむのだが、人間達は神やその使いは背中に翼を持っていると勝手に思い込んでいる節がある。イラでなくとも絶対に邪魔だろうと思う仕様でも己の理解を超える存在にはそういった幻想を抱くようだ。
特に翼の数が多ければ多い程高位だと考える習性も知っていたので今回は翼同士が干渉しないギリギリの数で形作ってみると浅はかな2人はこちらが思っていた以上の敬意を表している。
なのに何故かワーディライだけは先程とは打って変わって呆れた様子だったのだからイラの計画は一向に進む気配がない。
「・・・ワーディライ?神託を理解されましたか?」
「神託も何も貴様、『神族』のイラじゃろ?何じゃ?わしと戦いに来たのか?」
「えっ?!何で知ってるの?!」
イェ=イレィが『トリスト』へ報告した旨など把握していなかったので、まさか自分の正体を知っているとは思いもしなかったというのもある。
それにしても焦りがあったとはいえ簡単にぼろを出してしまったのは色々不味かったらしい。あれ程敬意を表していた2人も顔を見合わせて立ち上がった時には崇める気配は完全に霧散していた。
「ワーディライ、彼女は神ではないのか?」
「うん?そうじゃな・・・まぁ『神族』と言うからには力は神がかってはおるのじゃろう。」
「よ、よくわかってるじゃない!!じゃあ私の神託も信じるわよね?!」
更にワーディライの口から神と認めたかのような発言が飛び出してきたので嬉しくて素を見せてしまうと彼らは完全に理解したようだ。
「イェ=イレィ殿が治める『モ=カ=ダス』を侵攻したお主が何故かわしの所に来て『悪魔』を討伐しろと言う・・・ふむ、陽動か。にしても下手くそじゃのう。」
理由はわからないが全て見透かされているらしい。それが恥ずかしくて悔しかったイラが威厳を見せつけたくて翼を無理矢理20まで増やしたものの、最初から全く心に響かなかったワーディライは苦笑を浮かべるだけだ。
「まどろっこしいのは面倒じゃ。海の神とやら、わしに用事があるのなら戦いで語らぬか?」
「・・・あんた人間なのに生意気ねっ?!しかも噂より血の気が多いじゃない?!全く不愉快だわ!!」
こうなれば作戦も何もない。どうせイェ=イレィごと世界を沈めてやろうと考えていたイラは邪魔な翼を全て消した後、足元に大きな津波を顕現したのだが同時にワーディライもどこから取り出したのか、右手には漆黒の大槌がいつの間にか握られていた。
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