天神 -残される決断-④
『天族』が滅亡した話に衝撃と落胆を受けたのは同族だけではない。
「・・・・・あいつは殺しても死にそうになかったんだけどな。」
翌日、訃報を聞きつけたバーンが『トリスト』にやってくるとヴァッツやクレイスも言葉に詰まりながら詳細を説明する。
「力を取り戻した『神族』は強いからね。オレも何とかしたかったんだけどア=レイに・・・やられちゃって・・・」
「・・・・・」
この時同席を許されていたウォルトも初めて詳細を知り、ヴァッツを越える存在がいるのかと改めて畏怖を覚えたのだがそれ以外にも1つ気になる事があった。
それがクレイスだ。
セイラムの側近として働き、同僚のウォンスが暴走しないよう常に目を光らせていた経験からだろうか。どうにも彼は何かを隠しているように見えたのだ。
しかしそれを打ち明けようという雰囲気ではなく、理由はわからないが彼もまたヴァッツの様子を探っているらしい。
「そのア=レイっていうのはそんなにも強いのかい?」
「・・・・・そ、そうだね。ちょっとオレにはわかんないや・・・・・」
「・・・本当に?」
するとずっと黙っていたクレイスがこの拍子に口を挟んできたので周囲も少し驚いている。今のやり取りに何か不満でもあったのか?ウォルトは表情からそう読んだのだが真相はわからない。
「う、うん。どうして?」
「・・・ヴァッツなら相手の強さくらいは正確に見抜けるんじゃないかなって思ったんだ。違うかな?」
クレイスの言い分は理解出来る。だが意外なやり取りにウォルトもより観察眼を光らせると『魔族』の王バーンも違和感を覚えたようだ。
「・・・もしかしてア=レイってヴァッツより相当強いの?」
「えっ?!」
そうなのか?純粋が故に隠し事が苦手なヴァッツが図星だと言わんばかりの声を上げたのはその証拠なのか?
「・・・ねぇヴァッツ。僕達には、僕には隠し事をしないで欲しい。全部教えてくれないかな?」
それで疑いをかけていたのか。どこから入手したのかは知らないがクレイスは未だ報告されていないア=レイの詳細を把握しているようだ。そしてこの場でそのすり合わせをしたいのだろう。
『天界』では見せた事のない、とても真剣な表情を浮かべた彼が鋭い視線を向けると格上である筈のヴァッツがまるで親に叱られているかのような表情を浮かべて目を逸らすのだから相当大きな情報を握っている筈だ。
「・・・ごめん。あまり話したくないんだ・・・秘密とかあんまり好きじゃないんだけど・・・」
「・・・僕が聞きたいのは多分そっちじゃないよ。」
「え?」
「ねぇヴァッツ。ア=レイがヴァッツの父親だって本当なの?」
「「「「「「「えっ?!」」」」」」」
なるほど、クレイスが確認したかったのはそれか。あまりにも大きすぎる疑問に今まで黙って見護っていた人間達も思わず声を漏らしてしまったが当の本人は寂しそうな表情を浮かべた後にうつ向いてしまう。
「・・・あいつから聞いたの?」
「うん。ヴァッツと一緒に暮らしたいって言ってた。ねぇヴァッツ、彼は敵なの?味方なの?」
まさか、と思ったが彼もまた嘘をつく人間でない事はよくわかっている。だが味方かもしれないという考え方にはウォルトもまさかと思わずにはいられない。
「・・・・・敵って、何だろうね?」
そして皆がその答えを静かに見護っていたのだがヴァッツの口からは別の疑問が告げられると室内は真夜中のような静寂に包まれていった。
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