天神 -残される決断-②
破格の存在は遥か昔からずっと傍にいたのだ。ただその力を誰も正確に認識出来なかった。彼らがあまりにも矮小で傲慢な存在故に。
「ザジウス、お前の時代は終わったのだ。我らが力を取り戻した時にな?」
「・・・愚かな。」
世界から『神』として崇められる存在『神族』。その中で厳しい序列によって保たれていた秩序が今、破格の介入によって崩壊しつつある。
特に中立を保っていた戦神ヘル=ラーが革命軍に加わった事が大きい。これにより名だたる『神族』もそちらに加わっていくと保守派はザジウス一人だけになってしまった。
それでも自らの意思を変えるつもりなどさらさらない。
むしろ何故他の同族達はこうも簡単に忘れてしまうのだ。ヴァッツという破格により全てを失った苦々しくも貴重な経験を。
様々な得意分野を担う1000人程の『神族』を前に『全知全能』の力を持つザジウスはこれ見よがしに深く大きなため息をつくと戦う構えを取って見せる。
これは責任感も関係しているのだろう。ヴァッツが現れる前は確かにこの世界を、『神界』を束ねていたのだ。そしてそれが崩壊しつつある今も、最後の最後まで自分こそが『神族』の頂点であり代表である自負は以前よりも強さを増している。
「命が惜しくない者だけかかってくるが良い。何故わしがこの世界の頂点に立つのか、今一度思い出させてやろう。」
もしここで己の命が朽ち果てようとも、それはそれで構わない。ヴァッツに全ての力を奪われたまま、ただの老人としてこの世を去る事を思えばずっと前向きに死んで行ける。
そんな覚悟に自身の能力を上乗せすればいくら鈍感な同族も妙な威圧感に尻込みするというものだ。特に戦い慣れている猛者と呼ばれる存在はザジウスが命を懸ける意味まで深読みし始める。
「・・・我々は神なのだ。であればその力を以ってあらゆる世界に我々の威光を示すべきではないのか?秩序と平和の為に。」
「わしらがおらぬ間も世界は存続しておったよ。そもそも神とは卑しき者が作り出した偶像に過ぎん。利用されるだけの存在でお前達は満足なのか?」
この絶対的な事実には誰もが遥か昔から気が付いていた。ただ暗黙の了解で言葉にされなかっただけだ。
神などという言葉は虚像であり基本的には卑しき者達が虚勢の力、権力とやらを振りかざす為だけに生み出した都合の良い存在に過ぎない。それでも神の威光を示していたのは『神族』達の自己満足だけだった。
ところが神の力を失った期間、そして取り戻した後の世界を見てザジウスは大いに考えを改める。
自分達の行いがどれ程愚かだったかを。いたずらに他の世界へ干渉する事の無意味さを。
もちろん彼らから絶えず送られてくる数万、数億の祈りを聞く事など造作もないがそれを全て聞き入れた所で一体何になるというのか。自分達ですら一瞬で奪われる立場なのに神という作り出された都合の良い偶像に縋る事の何と無意味で滑稽なのか。
「よいか皆の者、わしらは『神族』であって神ではない。そもそも神と呼ばれる存在など、この世には存在せんのじゃよ。」
なのでザジウスは何度も説き続けるのだ。身の程を弁えよと。そして気が付いてもいた。本当の神とはどういうものなのかを。
ただ力に溺れて再び前が見えなくなった同族達は誰も彼の話に耳を傾ける事無く、遂に傲慢な力がぶつかり合うと『神界』は以前よりも悲惨な状況へ向かっていくのだった。
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