天神 -残される人々-⑥
想像してたよりも元気な姿を確認出来たメイは早々に部屋を後にしようとしたのだがヴァッツは随分と気に入ってくれたらしい。
「一緒にイェ=イレィの話も聞いていってよ!」
ハルカの事を考えるとここは断るべきだったか。だが立ち上がろうとした時に手を掴まれて子犬のような双眸で見つめられるとメイも無下に断れなかった。
なので仕方なく座り直すと前に座ったイェ=イレィは非常に納得がいかないといった様子を隠そうともせずに口を開く。
「はい。では本題を・・・ヴァッツ様、現在『神族』達が再び力を取り戻しております。どうかこれらを今一度奪い去っては頂けませんか?」
話によると彼女も同族によって任されている国『モ=カ=ダス』を一度壊滅させられたらしい。更に彼らは一人一人が神と呼ばれるに相応しい力を持っている為、放置しているとこの世界に災いを及ぼすだろうという主張だ。
「なるほどね。でも今のオレは力がほとんど使えないんだ。どうしよう?」
「「「「「「「「「えっ?!?!」」」」」」」」」
ところがイェ=イレィの相談内容など一瞬で吹き飛ぶ重要な事実を告げられると室内では大きな驚愕が木霊する。
「ヴァッツ、それどういう事?」
その中でも冷静さ、というより自分らしさを失わないアルヴィーヌが普段と変わらぬ口調で尋ねるとヴァッツの方はやや困惑した様子を見せている。
「うん、ア=レイから光の玉を埋め込まれたせいでオレ自身の力が凄く弱まってるんだよ。だから『神族』の力を無くすのはちょっと難しいかな。」
「あ、あのっ?!その、御力自体が消えた訳ではないのですね?!」
「それはそうなんだけど・・・う~ん、困ったね。」
彼が落胆、思い悩んでいるといった話はただ『天族』を護れなかっただけでなく、そういう部分からも来ているようだ。珍しく力のない笑顔を浮かべると周囲は言葉を詰まらせるが逆隣に座るアルヴィーヌは普段と変わらない様子で彼を優しく抱きしめる。
「大丈夫。ヴァッツはヴァッツだから。」
これは『天族』だからか、それとも王女としてしっかり教育を受けてきたからだろうか。王族として、妻としてとても慈悲を感じる暖かい対応には感嘆を禁じ得ない。
ただ彼が破格の力を失っている問題には早急な対策が必要だろう。特に『神族』に知られれば何を仕掛けられるかわからないのだから。
「ねぇヴァッツ、もし『神族』がこの国や世界に攻めてきた時、あなたは戦えるの?」
「うん。それは大丈夫・・・・・」
「・・・あんまり大丈夫そうじゃない顔してるわよ?」
「え?いや・・・うん・・・そうだね。ア=レイが現れなければ大丈夫・・・」
恐らく悩みは全てそこに集約されているのだ。これまで様々な破格の力を見せてきたヴァッツが最も警戒するア=レイとは一体何者なのだろう?
未だ彼が自分の父親かもしれないという話を誰にも打ち明けていない為、その正体や強さなどが誰にも計れなかったのだが、一先ず他言無用とレドラに釘を刺された事でこの話は幕を閉じるのだった。
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