天神 -手の平で踊れ-②
力を半分程に抑えられているとはいえ、同じ『神族』達の気配はどれだけ離れていても察知出来てしまうものらしい。
「・・・・・まさかヴァッツ様が?」
かつて全ての力を奪われた『神族』がこの世界に降り立った事など問題ではない。何故同族に力が戻ったのか、そしてその理由こそが最も重要なのだ。
「何だイェ=イレィ。妙に緊張しているな?」
「いえ・・・どうやら私の同族達がこちらに向かっているようですわ。」
「ほう?確かヴァッツに力を奪われたと聞いていたが・・・奴の事だ。慈悲でも与えたのかもしれんな。」
確かにヴァッツの心は海よりも深く、空よりも広い。だがきっかけもなく突然彼らに力を戻すだろうか?そもそもこちらに向かってくる『神族』達からは明確な闘気や殺気を感じるのだから再会を喜ぶような場面にはなるまい。
「・・・フロウ様。今から少々荒っぽい客人が来られます。今日の所はお引き取り願えますか?」
なので悪感情を肴に美味しい酒を飲んでいた悪魔族へさっさと帰る様告げると狼の顔はきょとんとした表情を浮かべている。
「・・・・・なるほど。ただ事ではないという事か。いいだろう。」
そして何かを察したフロウは腕を組み頷くと席を立って帰路へ着く、と思っていたのだがその腰が椅子から離れる事はない。
「あの、邪魔ですのでさっさと帰って貰えませんか?」
「む?しかし相手は明確な敵意を放っているぞ?お前一人で対応するのは難しいだろう。よって・・・気分次第では助太刀してやらんでもない。」
「・・・貴方がいた所で何とかなるとも思えませんが。それにもし死んでも恨まないよう『悪魔族』達に言い聞かせておいて下さいね?」
「やれやれ。相変わらずの減らず口だ。」
最近では利害の一致からよく共に行動しているが決して気を許している訳ではないのだ。そこを勘違いされないよう厳しく釘を刺していると招かれざる客が静かに露台へと降り立ったらしい。いや、1人だけ巨体の為か、割と頑丈な王城の大岩にひびが入ってしまった。
「やっほー。イェ=イレィ、いるんでしょ?」
「その声はイラか。相変わらず頭の悪そうな物言いね?」
恐らく戦う事になるのだろうがここは国ごとヴァッツに任されている為出来る限り損傷は抑えたい。だが挑発せずにはいられなかったイェ=イレィは嫌味を1つ漏らしてから『神族』の面々を確かめる。
まず海の神であるイラ、そして太陽とも称されるソ=ノ=フォウド、後は戦神ヘル=ラーが姿を現した事には素直に驚いた。
「ヘル=ラー、ここでは貴方の望むような戦いは起きないわよ?」
「わしは戦わん。ただ、お前と接触する事でア=レイやヴァッツと邂逅出来ないかと考えている。」
何故そこでア=レイの名が出てくるのだろう?
未だ『神族』が彼の手によって力を取り戻した事実を知らないイェ=イレィは不思議そうに小首を傾げるしかなく、戦いたくてうずうずしているイラからはいつでも爆発しそうな闘気が漏れていた。
「ま、詳しい話は別の所で聞きましょう。ついていらっしゃい。」
しかしヘル=ラーの発言からもしかするとヴァッツが現れるかもしれないという情報は彼女の中で大きな喜びと希望になる。
またあの時のように、自分が絶望の底に叩き落とされた後に颯爽と現れて救ってくれるのだろうか。本来であればそうなる前に手を差し伸べて欲しいと考えるべきだが心酔している彼女にそんな野暮なことを考える余地は残されていない。
「え~?ここでいいじゃん!全部沈めてあげるからさ?!」
「ここはヴァッツ様から任された場所なの。もし下手に破壊して彼の怒りを買う自信があるのなら構わないけど・・・死より恐ろしい目にあっても知らないわよ?」
「ならば猶更ここで戦うべきだ。」
だがこの失言は別の者を掻き立ててしまったらしい。ヘル=ラーが突然力を放つと王城は一瞬で瓦礫と化し、城下に広がっていた建物も全てが塵と化してしまった。
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