天神 -天族について-⑨
「その姿、貴様はヴァッツだな?ふむ・・・もしやア=レイはこれを見越していたのか?私が『天界』を荒らす事で息子をおびき寄せる為に?」
またとんでもない都合の良い考え方はセイラムでさえも唖然とさせてしまうが問題はここからだ。
「ヴァッツ。気を付けてくれ。話を聞く限りだと『神族』達はア=レイによって力を取り戻している。」
「えっ?!そ、そうなの・・・・・か・・・・・」
まずは再びヴァッツに力を奪ってもらえば一先ず『天界』の治安は護られるだろう。そう思ってすぐに事実を伝えるが何やら様子がおかしい。いつも元気一杯な彼が声を小さくするとその場に膝をつく。それだけでも何やら異常を感じたが次の瞬間。
どばっ・・・!!べしゃっ!!
何と彼の胸元から光る大鎌が斬り裂くように姿を現したのだ。これには血を見慣れている『天族』『神族』も目を奪われたがそこで終わりではない。
「ふむ。多少抗えているようだがまだまだだな。」
大きく開いた胸の傷跡から声が聞こえてくるとそこから一人の人間が光と共に静かに姿を現す。まるで光を覆っているかのような真っ白な衣装に身を包んでいるせいか、周囲が大火で燃え盛るのすら霞む程眩しい男はヴァッツに似た蒼く短い髪を持っている。
絶対に只者ではない。そしてそれを強く求めていたソ=ノ=フォウドは誰よりも素早く地上に降りるとその前に深々と頭を下げて跪いた。
「ア=レイよ。あなたをお待ちしておりました。」
「ほう?確か君は『神族』のソ=ノ=フォウドだね?私に何か用かい?」
「はっ!あなたには是非『神族』を束ねる王、神王として君臨して頂きたく馳せ参じた次第にございます。」
このままでは不味い。ヴァッツがぴくりとも動かないのも不味いし、もしア=レイがそれを受けてしまうのも大いに不味い。どうすればこの状況を打破出来るのか、再び思案し始めたセイラムは一先ず自らも地上に降りるとア=レイはとても楽しそうに笑いだした。
「はっはっは。微塵も興味がそそられないな。」
よかった。その答えを聞いた事で安堵を覚えるもまだ緊迫した状況は続いているのだ。
「貴様がア=レイか。ヴァッツの親という・・・」
「ああそうだ。セイラムが羨ましいよ。君の娘達はとても君に似て強く、聡明だ。それに比べて私の息子は・・・はぁ。」
間違いなく初めて邂逅した筈なのにこちらの事情は全て知り尽くされているのか。底知れぬ不気味さに言葉を失うがそれ以上に周囲はあのヴァッツがまるで駄目息子だと言いたげなア=レイを全力で警戒し始める。
「ア=レイよ。では何故『神族』に『天界』を荒らせ、などと申したのです?」
そこにまだ諦めていないソ=ノ=フォウドが口を挟んでくると彼はこれ見よがしに首を横に振って見せた。
「そりゃヴァッツの成長を願ってだよ。こいつは私の息子達の中で唯一まともな思考を持って生まれたんだ。大事に育てたいじゃないか。」
何故話の脈略が交差しないのか。これは自分達の想像に及ばない位置で答えているからに他ならないのだが、残念なことにそれを理解出来る者はここにいない。
「・・・・・オ、レが・・・成長、だって?」
「お?目覚めたか。」
なのでこの先は破格同志の戦いとなるのだろう。見た目以上に深い傷を負っているヴァッツは辛うじて立ち上がりはしたものの顔色は悪く、胸の傷からは血液以上に光が漏れているので誰もが釘付けになっていた。
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