天神 -天族について-⑤
ウォルトが少しだけ憧れを抱くウォンスも決して特別な感情が芽生えている訳ではない。ただ情欲に身を任せて行動しているだけだ。
それでも感情に疎い『天族』の中で欲望を深く理解する者は少なく、そこに裏表のない性格が重なると周囲も自ずと頼りたくなるものらしい。
「しかしこの鍛えるっていうのはどうも性に合わん!!そもそもこれで強くなってるのか?!」
クレイスとの約束を護る意味もあるのだが、毎日酒浸りでろくに仕事をこなさない彼にはセイラムも手を焼いていた。そこで戦力増強という名目でウォンスに『天界』初の将軍位を授けて他の面々を鍛えるという任務を与えた訳だ。
「個としてはいまいち実感は湧きませんが陣形を作り、周囲と息を合わせて攻撃をする方法には一定の効果があるかと。」
『天族』の一人がそう発言するとウォンスも頷かざるを得ない。確かにセイラムのように時間を止めるような相手でなければ波状攻撃というのはとても効果的だと本能でも理解している。
「・・・はぁ~、仕方ねぇ。でも残業は無しだ!日が傾いたらすぐ切り上げるからな?!」
なので諦めたウォンスは訓練の意味に疑問を感じながらも数十の同族達を二手に分けて模擬戦を繰り返していた。
「面白い事をしているな?」
そんな不満を募らせていたある日、突然答えとして完璧な存在が現れると他の『天族』達も目を丸くして注目する。
「何だ?地上の者か?」
見た所は自分や人間達と変わらぬ青年のようだが身に着けている衣装は相当豪奢なものらしい。他に特徴的なのは半分以上地面に付いている長すぎる赤い髪の毛だ。
「いいや。私は『神族』のソ=ノ=フォウドだ。ところで『天族』達よ、ここにア=レイという者はいるか?」
これはどちらに驚けば良いのだろう。2年前、『天族』を戦奴のように操っていた『神族』に憤怒と嫌悪を抱くべきか、クレイス達から気を付けるように言われているア=レイの名前に言及していくべきか。
「・・・なんでお前がア=レイの名前を知ってるんだ?それに『神族』っていうのはヴァッツが力を奪ったって聞いてるぜ?」
「そうだ。一度は全てを奪われたがア=レイという男に元に戻してもらってな。その交換条件としてこの『天界』を荒らせという話らしい。」
やはりウォンスは将軍としての器なのだろう。本能的な感情に囚われる事無く端的な質問をする事で周囲の『天族』達も怒りに任せた野性は鳴りを潜めて話に集中し始める。
「・・・って事はだ。お前は俺達の明確な敵、だな?!」
「まぁそうなるな。ただ・・・私はア=レイとやらに会ってみたいのだ。誰でもいい。奴がどこにいるか知っている者はいないか?」
口調や内容からも敵という認識で間違いなく、それ以上にソ=ノ=フォウドの興味はア=レイに向けられている。であればまずこの状況を本国に伝えるよう第一に動くべきなのだが残念なことに『天界』ではまだそこまで洗礼されていない。
誰一人危機感を抱けないまま全員が素直に顔を見合わせて首を横に振る光景は彼の目にどう映ったのか。
「そうか・・・だったらおびき出してみるか。」
それに対応できたのはやはり実力者であるウォンスだけだ。恐らく『天界』を荒らすという条件を達成する為に力を放つとわかっていたから。
ぼぼんっ!!!!!
ところが彼から殺意や闘志といったものは見られず、無駄に長すぎた髪が勢いよく真上に立ち上ったと思ったら周囲の『天族』達を一瞬で包み込む大火がそこかしこに現れたではないか。
「うおおおっ?!『魔術』か?!」
ウォンスだけは辛うじて身を躱せたものの、その炎は普通のものではないらしい。相当屈強な『天族』達が消し炭すら残らず消えてなくなる中、ソ=ノ=フォウドの長い髪も大火に変化していた。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




