天神 -天族について-③
『天族』は強さに差はあれど全員が人間以上に屈強なので酪農業周りの作業はとても円滑に進んだのだが、問題は内務と法整備だ。
「基本的に『トリスト』や『アデルハイド』のものを真似て良いと思う。彼らの国も争いを好まないのでな。」
つまり防衛を主軸に考えるという事か。考えてみれば『天界』から他の地に攻め込むつもりもないのだからセイラムの意見も尤もだ。
ただクレイスとの約束により世界を揺るがす危機が訪れた場合は素早く対応する必要がある為、部隊の編成などはしっかり行っておくべきだというのが最終結論になる。
「俺達にそんなの必要かねぇ?」
「ウォンス、お前は少し楽観視が過ぎるぞ。」
と、諌めてみたものの正直ウォルトもよくわかっていない。それは考えるまでもなく、自分達がいつも単騎で戦ってきたからだ。
一応ショウが持ってきてくれた書物の中に隊列や策略といった要素が書かれている物もあったがそれらは飛べない弱者のものであって自分達に必要だと思えなかった。
「まぁその辺りも我々なりに研究していこう。」
そうして議会は幕を閉じ、同席して最小限の助言をしてくれていたショウとクレイスも笑みを浮かべつつ頷きあうと別室で退屈していたアルヴィーヌがととと~とセイラムに駆け寄って無邪気に抱き付く。
「それじゃ前の約束通り、私達のお話を聞かせてあげる。」
「む?前の約束だとヴァッツやクレイスに話を聞かせてもらいたかったのだが・・・」
しかし自分の事を話したくて話したくて仕方の無い愛娘にせがまれると『天界』の王も形無しのようだ。最近はよく見せるやれやれといった笑みを浮かべながら客間に向かうといつも通りウォンスやウォルトも同席を許される。
そして今日に限っては気になる光景が目に留まった。
というのもイルフォシアがクレイスと話をしたり、目を合わせた時には見た事のない雰囲気や仕草が現れるのだ。
更に詳しく観察すると彼女が父の前で絶対に見せないような表情を浮かべたり、時に慌てたりしているのをクレイスもセイラムとは違う優しい雰囲気で見護っている。
もしや男というのは女にこういう接し方をすべきなのか?そうすれば自分も妻を娶り、家族を得られるのだろうか?
肝心な真意に辿り着けないウォルトはつい気になってじっくり眺めていると気を緩めすぎていたらしい。いつの間にかアルヴィーヌから同じような観察眼が向けられていたので慌てて居住まいを正す。
「・・・もしかしてウォルトもイルの事が好きなの?」
「「えっ?!」」
そこから何を勘違いしたのか、とんでもない質問を投げかけてきたのでクレイスとイルフォシアは同時に驚愕を示した。この場合の好きとはどういった意味なのか、未だ感情が未成熟のウォルトに答える術はなかったが2人の様子から無難な回答を用意する事くらいは可能だ。
「そうですね。セイラムの娘ですから嫌いではありません。」
「あ、ああ!そういう事ですね?!」
もし好きだと答えていればまた違う反応が見れたのだろうか。イルフォシアが大袈裟に頷いて納得する様子を不思議そうに眺めているとクレイスとセイラムも安堵の様子だ。
「好きって難しいよね・・・」
そもそも好きとは何だろうか。今まで大人しかったヴァッツがぽつりと呟いた事で周囲は再び驚きを見せるがウォルトだけはその言葉に強く同意しつつ、無意識に頷いていた。
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