天神 -破格-③
「・・・息子の躾がなっておらんのう?」
「はっはっは。そう言われると耳が痛いよ。しかし私も子育てというものがさっぱりわからなくてね。今回は初めて人間に委ねてみたんだ。文句はそちらに言って欲しいね。」
それでも皮肉を返せたのは流石『神』と崇められる存在だ。これによりナジュナメジナもザジウスという人物に興味を持ち、より黙って見守る事を選ぶとア=レイは満足そうに話を続ける。
「それでどうだい?以前の力を取り戻したくないかい?私の要求に応えてくれるのであれば今すぐに戻すよ?」
「・・・・・気に入らんな。」
これが『神』か。意識はしていないのだろうが力関係の都合上、上からものを言われている様子が気に入らないザジウスが睨みつけるように短く反論するとこちらもぞくぞくした。
「おや?ではもう少し譲歩した方が良いのかな?言ってみてくれ。私が納得する範囲なら何でも叶えてやるぞ?」
「・・・・・気に入らんというのは貴様の存在が、じゃ。まだ名前も聞いとらんかったな。貴様、何者じゃ?」
「おっと、これは失礼。私はア=レイだ。さて、返事を聞かせてもらおうか?」
「いいや。まだ質問がある。わしらの力を戻して『天界』を荒らすじゃと?もし貴様が本当にヴァッツの父なら自らの手で荒らせばよかろう?それくらいの力を保有しておるのじゃろう?何故それをやらん?」
「これが私の慈悲だからさ。」
「《慈悲?》」
意外な言葉にナジュナメジナもザジウスと同時に呟いてしまった。ただア=レイは本気でそう考えているようだ。
「私が直接力を使えば全てが無に帰してしまう。それはそれで構わないんだけど、ここはヴァッツが生まれ育った界隈でもあるんだ。出来ればあいつの成長に使いたい。親心とも言えるのかな?」
「・・・何を言っておる?」
「まぁ細かい事はいいじゃないか。それよりどうかな?私との取引、受けてもらえるかい?」
「・・・・・『神族』の長であるわしがそのような話に乗ると思うか?」
何という下手くそな交渉だ。やり取りを見守っていたナジュナメジナはザジウスの答えを聞いて自分に代われと言いたくなりそうだったがア=レイだけは不思議そうに小首を傾げた。
「あれ?じゃあそのまま余生を過ごす感じかな?いいのかい?以前は有り余る力を振るって『神界』を、数々の世界を支配下に置いていたのに。」
「くどいな?わしらは『神族』だ。お前達のような訳の分からん存在の甘言に靡く筈がないじゃろう?」
その毅然とした答えには部外者であるナジュナメジナも感動を覚える。やってきた事は最悪だがこれこそ強者の矜持なのだろう。いつか自分にも手に入るだろうか?
体を乗っ取られた事で意地汚い欲望を失っていたナジュナメジナは久しぶりに湧き上がる強い物欲を覚えたがア=レイにとって、それはどうでもいい事だったらしい。
「そうか。ではよろしく頼むよ。」
そういって立ち上がると景色は自分の執務室へと戻っていた。
《あれ?もう戻って来たのか?まだ交渉の余地は残っていたのにもったいない・・・》
《心配しなくとも彼らは従ってくれるよ。》
相変わらず掴めない男だがそれこそが破格である証なのだろう。よくわからないまま『神界』から戻って来たナジュナメジナは一先ずその話を頭の片隅にしまうとそれ以上に気になったヴァッツの父親という発言について、久しぶりにきつく問い詰め始めるのだった。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




