天神 -破格-②
ヴァッツが大怪我を負った件については厳しい箝口令が敷かれる。これは彼の影響力を考えても当然なのだがそれよりも気になっていたショウは2人だけの状況になった時、ルルーから聞かされた話を尋ねてみると意外な答えが返って来た。
「・・・オレ、よくわかんないや。」
彼の性格上、腹芸は好まないし出来ないだろう。なので周囲を慮る懐の深い性格はとぼけるという形で収まったようだ。普段の明るい様子は鳴りを潜め、やや陰のある表情でそう告げられるとこちらも追及するのが難しい。
「そうですか。しかし気を付けて下さい。貴方に大怪我を負わすア=レイという存在には私達では太刀打ち出来ない可能性もありますので。」
「そうだね。」
あまり触れられたくないのだけはよくわかる。初めて見る彼の憂いた表情にはショウもこれ以上干渉する事を諦めるが世界は既に蝕まれていたのだ。
《今日は少し面白い所に出向いてみようか。》
突拍子もない言動はいつもの事だ。故にナジュナメジナも深く気にすることなく彼の行動を体内から眺めていると景色が一瞬で変わる。
《・・・何だここは?》
そう呟いてしまったのも無理はない。何故ならそこは酷く荒れ果てており、立派だったと思われる建物は尽く倒壊していたからだ。人の気配なども感じない事から恐らく戦争によって滅んだ国なのだろう。
しかしそのような出来事など聞いた事が無かった部分だけは気がかりのまま、彼は普段と変わらない様子で歩き始めると小さな瓦礫の隙間に体を潜り込ませた。
「な、何者じゃっ?!」
「やぁこんにちは。元気そうだね?ザジウス。」
その中には気だけは強そうな高齢の老人が怯えた様子でうずくまっている。一体誰だろう?自分の記憶を遡ってみても該当しない人物を前にナジュナメジナは黙って見守る事を選択するとア=レイは静かに語り始めた。
「今日は君達にお願いがあって来たんだ。どうだい?ヴァッツに奪われた力を全て元に戻してあげるから少し『天界』を荒らしてくれないか?」
突然の提案にザジウスとやらも口をぽかんとあけているがそれはナジュナメジナも同じだ。ただこちらは絶対的な安全圏に身を置いているのと、その環境により冷静に熟考出来る体制が整っている。
《・・・この老人はヴァッツと関係があるのか?》
《ああ。以前『天界』にちょっかいを出していた連中でね。それによりヴァッツから全ての力を剥奪されたのさ。》
その話は何となく聞いた覚えがある。戦う事を強いられていた『天界』と『天族』の呪縛を解き放ったのがヴァッツであり、その原因が『神界』にいる『神族』だったか。
更に東の国『モ=カ=ダス』の女王も元『神族』で、今ではヴァッツの計り知れない力に心酔している話はあまりにも有名だ。
「・・・貴様はヴァッツの関係者か?」
「ああ、彼の父親だよ。」
《・・・・・ぇへえっ?!?!?!?!?!?》
だが全てがどうでも良くなる程大きすぎる真実を聞かされたナジュナメジナが心の中で雄たけびに近い驚愕の声を漏らすとア=レイはいつもと変わらない様子でそれを窘める。
《いや?!いやいや?!それは本当か?!お前は『七神』の一人だろう?!いやいやいや?!そ、そんな事よりあの破格と呼ばれるヴァッツの父?!で、ではあの者を呼び寄せる事も可能ではないのか?!大いに利用できるではないか?!》
《耳元で騒ぐな。残念ながらお前の下心には従えないよ。そもそもヴァッツはまだ私の存在を知らないんだ。》
何故だ?その続きが聞きたくて質問を投げかけようとしたが今は『神族』との取引が優先されるらしい。声が出なくなったナジュナメジナは仕方なく目の前にいるザジウスとのやり取りに意識を戻すと彼もまた、その事実に目を丸くしたまま固まっていた。
いつもご愛読いただきありがとうございます。
本作品への質問、誤字などございましたらお気軽にご連絡下さい。
あと登場人物を描いて上げたりしています。
よろしければ一度覗いてみて下さい。↓(´・ω・`)
https://twitter.com/@yoshioka_garyu




