恩義 -その資質-⑥
「「「「ア=レイに会った?!」」」」
あの後すぐヴァッツの部屋に戻って来たタシンはカズキだけでなくクレイスやショウが揃ってからその出来事について語ると4人は声を揃えて驚く。ちなみにタシンとしては直接戦っていたカズキが何も覚えていない事の方が驚愕だった。
しかし城内の壁や床に走っていた筈の亀裂も綺麗に消えていたので自分でもどこまでが本当の記憶なのかわからなくなる。
「それはどんな人でしたか?」
「えっとね・・・・・あれ?おかしいな?」
それでも何かしら説明しようと口を開いたのだが嫌な予感は的中したらしい。何故なら確かに対面して言葉を交わしたはずなのにその内容も、相手の姿も何も思い出せなかったのだから。
「『七神』の一員だからね。『天人族』なら人間の記憶くらい操れそうだし。特にカズキは、ね?」
「・・・・・」
『ハルタカ』の暗示にも一瞬で掛かるカズキは友人達からもそういう認識をされているようだ。それを本人も理解しているらしく、反論したくても出来ないと言った様子で口を尖らせているが今は大した問題ではない。
「・・・・・出会った記憶はあるんだけど・・・何でこんなに思い出せないんだろ?」
「・・・・・もしかするとア=レイの意図が隠されているのかもしれませんね。」
その推論に皆が注目すると各々が顔を見合わせながら持論を展開し始める。
「自分の存在を打ち明ける意図・・・宣戦布告にしては弱い気もするね?」
「少なくとも『トリスト』に単身で乗り込んできたんだ。その能力は侮れんが・・・戦う力はどんなもんなんだろうな?」
「・・・・・ねぇタシン。ちょっとだけ調べさせてもらってもいい?」
カズキは自ら戦った記憶を綺麗に失っている為、タシンからすれば妙な事を口走っているようにしか見えなかったが今はヴァッツの問いかけに頷こう。それから彼が右手をこちらにかざしてきた瞬間・・・
どばっ・・・!!べしゃっ!!
何がどうなっているのかは誰も理解出来なかった。ただ一瞬だけ光が差したと思ったら彼の胸元には大きな鎌のような刃が背中から貫通しており、それから後方に半回転するとヴァッツは宙を舞ってうつむけに床へ叩きつけられたのは間違いない。
そして動かない体と傷口からは静かに流れるおびただしい出血に誰もが意識を刈り取られたかのように動けないでいると、突然露台側の窓がぶち破られて銀髪と白い翼を顕現させたアルヴィーヌが飛び込んできたではないか。
「ヴァッツ!!大丈夫?!」
更に彼女が光の鎌を引き抜こうとするとそれは霧散し、普通なら絶命していてもおかしくない傷を負ったヴァッツが体を震わせて起き上がろうとしたのでやっと周囲も反応を始める。
「す、すぐにルルーを呼んできます!!!カズキとクレイスは応急手当を!!!」
「おう!!!ハーラー!!!包帯を全部持ってこい!!!」
「ヴァッツ?!だ、大丈夫だよね?!」
今まで彼が流血した話と言えばかすり傷しか聞いた事がない。それが胸板を貫かれるという大怪我を眼前で目撃してしまったのだから友人達だけでなく、彼を信じる執事や従者も顔面蒼白だ。
「だ、大丈夫・・・・・」
「わ、わからないけど・・・ヴァッツ君、今は喋らない方がいい、よ・・・」
それからすぐルルーとショウが戻ってくると『緑紅』の力とやらでヴァッツの傷はみるみる快復していく。ただ彼女の力では9割程しか癒せないらしく、その日手厚い手当を受けた彼は元気になったという主張は聞き入れられないまま無理矢理寝具に寝かしつけられるのだった。
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