恩義 -その資質-③
「それで、タシンさんはハーラーに異性を口説く話術を求めているのでしょうか?」
「口説く・・・う~ん。もう少し強いやつが知りたいかな~?もっとこう、彼の意識を私だけに向ける方法っていうか。」
「先に断っておくけど私は何も教えないわよ?」
ところが講師の立場である筈のハーラーが早々に拒絶を宣言した事でタシンの機嫌も少し悪くなる。
「え~?何でさ~?言っても減るもんじゃないし~、そもそも勿体ぶるようなものでもないでしょ?」
「だったら自分で考えて行動すればいいじゃない。そもそもあなたの考え方が気に入らないの。金輪際私に近づかないでもらえる?」
それがわからないから尋ねているというのにこの女は頭が悪いのか、自分の技術を人に教えたくないだけなのか。タシン以上に不機嫌な表情を浮かべて吐き捨てたのだから再び険悪な雰囲気が漂い始めた。
「はいそこまで。わかりました。まずタシンさんの問題から解決しましょう。」
「私の問題?」
「はい。あなたはハーラーを見下し過ぎです。確かに私も気に入らない部分は多々ありますが少なくともヴァッツ様への気持ちは真っ直ぐですしあなたのいう妙な行動はほとんど取られていません。」
「あら?!時雨ちゃん、よくわかってるじゃない?!仕方ないわね~じゃああなたにだけ私の妙技を教えて・・・」
「いりません。」
少し褒められたからと敬称を変える女を見下して何が悪いのか。まさか中立である筈の時雨に責められたことで落胆を覚えたタシンは2人の顔を見比べつつ口を尖らせるがおの視線はハーラーにも向き直る。
「それにあなたが数多の男を堕としてきたのも事実なのでしょう?見境なくとっかえひっかえしてたら同性異性関係なく嫌悪感を抱くのは当然です。そこを少しは理解して下さい。」
「そーだそーだ!」
「・・・言っておくけど見境なく、というのは誤解よ?私はその時最も欲しい物を持ってる男に取り入ってただけ。」
それはやっぱり売女というのでは?何故そんな生き方をしてきて妙に誇り高い風な感じを出すのか全く理解出来ないタシンは白い目で彼女を見ていると再び時雨が口を挟んでくる。
「と、いう訳でそういうのを無しで話し合いましょう。お互いの揚げ足を取ったり卑下していると話が進みません。」
「話し合い、ねぇ。私はハーラーの妙技ってやつを知りたいだけなんだけどなぁ・・・」
「・・・ある意味素直な性格みたいだけど、あなたには恐らく無理よ?」
3人の中で最も年下の時雨に諭された2人は仕方ないといった様子も隠さず、それでも多少言い方に気を付けて話題を振ると意外な答えが返って来た。
「どうして?」
「・・・そうね、気概、と言えばいいかしら?カズキ様を自分の物にしたいって言ってるけどその心意気が感じられないのよね。ねぇタシン、あなた自分に嘘をついてない?」
あまり指摘された事のない内容に思わず小首を傾げるが答えは見つからない。なのでそのまま視線を時雨に向けると彼女も思い当たる節があるのか、少し考え込んだ後静かに口を開く。
「気概・・・とは少し違う気もしますが、確かにタシンさんからはカズキ様に対する強い思いというか、慕うような気持ちはあまり感じられませんよね。ちなみに彼のどこを好きになったのですか?」
「好き?・・・う~ん・・・頼れる所?」
「あら?だったら狙うはヴァッツ様じゃなくって?」
その発言に時雨から余計な事を言うんじゃないといった気配を感じたが大丈夫、乗り換える予定は今の所ない。それよりも彼の好きな所を考えると強さしか思い浮かばないのは少々不味いか?何故ならそうなると彼以上に強いヴァッツを狙うべきだというハーラーの意見を肯定する事になるのだから。
「・・・あれ?じゃあ私もヴァッツ君とくっついた方がいいのかな?」
「・・・ハーラァァァ?」
「大丈夫よ。この子、自分の事すらわかってないんだもの。誰かに取り入るなんて無理無理、諦めて分相応に余生を過ごしなさい。」
しかし久しぶりに頭を使った答えも即座に否定されると憤怒を忘れる時雨を他所に、タシンはまたも言い知れぬ不安に襲われた。
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