恩義 -侍女の務め-②
侍女の扱いというのは国によって違ってくる。
「ハーラーさんですか?!よろしくお願いします!召使いのアファマルと申します!!」
「アズラファです。よろしく。」
「アスファルです~。よろしくね~。」
「アファダルです。よろしくお願いします。」
「ハウフです!!よろしくお願いしますです!!」
「よ、よろしくお願いします。」
最初にショウから召使い寄りと釘を刺されていたので同列なのは間違いなさそうだが、それにしても随分と若くて元気な少女達だ。
(・・・いやいや、ここで押し負けてはいけないわ。まずはこの子達と親密になり、最終的には主従の関係に持ち込めば大いに利用出来る筈。)
まずは控室で顔合わせをした後、大人しく振舞って様子を見る事にしたハーラーは挨拶もそこそこに彼女達から仕事の内容を教えて貰う。
「えっ?!ヴァッツ様の御部屋にはいかないの?!」
そこですぐあくどい左宰相の目論見が露呈した事で思わず声を上げてしまったが彼女達も特に何か言いつけられていた訳ではないようだ。互いが少し驚いて顔を見合わせるとアファダルが静かに教えてくれる。
「ヴァッツ様にはレドラ様がついておられますからね。それに時雨様も側近としてだけでなくお世話もなさっているようです。私達も彼女達がヴァッツ様との距離を縮める為に余計な手出しはしないよう言われてますし。」
何と言う事だ。まさかハーラーが来る前からそういう流れが出来ていたとは。通りで冷酷そうなショウが簡単に折れた訳だ。
「・・・ヴァッツ様には全く近づかないのですか?」
「そんな事はありませんよ?!以前元服の儀の時には御召し物のお手伝いに行きましたし!!」
しかしその話が3年前だと聞くと軽いめまいを覚える。星座になぞられる恋人同士ですら年に一回は会っているというのに現実とは酷い物語だ。
「・・・なるほど。皆様が仰ってたようにハーラー様はヴァッツ様に恋をされている、のですね?!」
「・・・・・え?」
ところがアファマルが目を輝かせて突拍子もない事を口にするとハーラーは目を丸くして言葉を失った。
恋?
随分と久しぶりに聞いた言葉にどう反応すればよいのか放心していると最年少のハウフも頭がどこかに飛んで行くのでは?と思われるほど激しく頷いている。
「いいですね!!恋!!でもごめんなさい!!私達もハーラー様がヴァッツ様に近づくのは出来るだけ止めるように申しつけられているんです!!本当なら全力で応援させて頂きたいのですが!!」
「ちょ、ちょっと待ちなさい。色々と誤解があるようだけど・・・まず、私がヴァッツ様に近づかないよう申し付けたのはショウ様ね?」
「はい。他にもクンシェオルト様、リリー様、時雨様、ハルカ様から同じ御用命を承っております。」
素晴らしい。どうやら根回しは完璧のようだが彼女達の口の軽さは加味されなかったのか?いや、考えてみれば何の力も持たないハーラーがそれを知った所でどうしようもない。
「・・・あれ?確かアルヴィーヌ様もヴァッツ様の婚約者よね?あの方は何も言っていないの?」
だが彼に関する情報をなるべく収集していた彼女は違和感を尋ねると召使い達は再び顔を見合わせてから今度はアズラファが教えてくれた。
「アルヴィーヌ様は自由な御方なので。ヴァッツ様に許嫁が増える事にも危機感や忌避感は抱かれておられないのでしょう。」
その答えは光明を見るに十分だった。つまり『トリスト』の王女である彼女を味方に引き込めればハーラーにも十分勝機があるではないか。更に召使い達の御世話先には彼女も入っている。となると細く険しい道ながらも歩き出す事は出来そうだ。
「・・・わかったわ。改めてよろしくね。」
いける、いけるぞ。再び野望に火の着いた彼女は不気味な笑みを浮かべつつ改めて姦しい召使い達と挨拶を交わすと、初日から一切手を抜かない真面目な仕事ぶりを披露するのだった。
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