恩義 -傾国と美女-⑰
「・・・ハーラーには条件付きで『トリスト』に入れてあげてもいいんじゃない?」
そして翌日には敵だと思っていたハルカからそのような提案をなされたのでハーラーの心は混乱と狂喜で踊り狂う。
「ほう?何故ですか?」
「だってこの人の悪評って皆に知れ渡ってるじゃない?今後もナレットみたいに利用してくる人間が近づいてきそうだし。だったらもう安全な場所で保護するのがいいかなって。ヴァッツはどう?」
「・・・・・ハルカも優しくなったんだねぇ!!オレ、嬉しいよ!!!」
「ぎゃあああ!!抱き着くなぁぁぁあぁ!!!」
(わかる!!わかるわよ?!でもその好意は私にこそ向けられるべきなの!!)
なるほど、リリー達を襲っていた嫉妬はこのような感じか。真横で抱きしめられるハルカは口でこそ嫌がってるようだが照れ笑いに頬を紅潮させている様子から本心ではない。むしろ相当喜んでいる。
「・・・あたしは嫌、ですね。何か、周囲に悪影響がありそうで・・・」
しかし自分がヴァッツの隣を得るにはまだまだ足りないらしい。今度はリリーが遠慮気味に意見を述べるとハーラーも最終判断が下されるまで見守るしかない。
「私も反対です。これ以上ヴァッツ様の寵愛を奪われたくありません。」
更にずっと大人しかった時雨もやっと口を開いたかと思えばその言葉には真っ直ぐな感情を乗せている。今まで目立たなかったものの、もしかするとヴァッツへの気持ちは彼女が最も強いのか?
「う、う~ん・・・うん?あれ?もしかしてハーラーもオレと結婚したいの?」
「はい!!!」
「「「ダメッ!!!」」です!!!」
「・・・私が人を好きになっちゃいけないの?」
「そうではありません!が、貴女はヴァッツ様をただ手に入れたい、それだけで行動しているでしょう?!私達はそれが見過ごせないと言っているのです!!」
「そうだそうだ!なんつぅか、ヴァッツ様の御力目当てっていうのがバレバレなんだよ!!そんな奴をのさばらす訳にはいかねぇだろ?!」
やはり露骨過ぎたか。2人から駄目出しされるとぐうの音も出なかったハーラーはただただ恨めしそうな表情を浮かべるしか出来なかったがここで『暗闇夜天』族のハルカが一計を案じる。
「お姉様、もっと丁寧な言葉遣いを選んで?!でも2人が言う事もわかるわ。だから私からの条件としてヴァッツに色目を使わない事を提案します。これならどう?」
何という極悪非道な内容だ。これにより今度は困惑と狼狽を浮かべていたハーラーだがその意見には側近であるクンシェオルトが何度も深く頷いて同意を示してきた。
「・・・だ、そうです。ハーラー様?護れそうですか?」
「・・・・・いいわよ。でもヴァッツ様が私に好意を抱くのは止められないわよね?」
「やっぱ駄目だこいつ!!もう追放しようぜ?!」
「はいリリー落ち着いて落ち着いて!!」
余計に場が混乱してしまったがここは譲れないのだ。ヴァッツが違う少女を抱きしめて頭を優しく撫でるのを指をくわえてみる立場に甘んじてしまったが、感情を押し殺して決定権を持つショウの様子を窺うと、彼は騒がしいのも気にせず静かに答えを告げる。
「・・・いいでしょう。ただしヴァッツの婚約者にはもう1人、アルヴィーヌ様がおられます。彼女はこの中で最も強く、最も我儘なのでもし命を奪われても諦めて下さいね?」
「・・・ぇ、ぇえ!いぃわょ?」
最後は半分脅されたような形になったがこれで彼の傍に立つことを許されるのであれば成果として十分だろう。
ただしハルカの提示した条件だけでなく、『トリスト』では引き続き侍女として働く事を命じられたのだけは少し不満だったが仕方がない。
(・・・・・でもアルヴィーヌか。どんな娘なのかしら?)
そういえばナレットとの会話で聞いたような気がする。そこに一抹の不安を覚えつつ、もしヴァッツの妻になった場合、自分の立場はどうなるのだろう?とまるで少女のような妄想を膨らませるのだった。
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