恩義 -傾国と美女-⑮
必ずヴァッツを堕とす為に絶対的な条件として彼の傍にいなければならない。
「えっ?!わ、私は『トリスト』へ赴けない、のですか?!」
なのに入国許可が下りないという事でハーラーの身柄は他国へ移される話題になると珍しく取り乱してしまった。
「はい。過去の素行不良がありますからね。我が国を乱す不穏分子を入れる訳にはいかないのです。」
しかしこの赤毛の左宰相は言動に遠慮がない。それは同席していた面々でさえもやや眉を顰める程だったがハーラーもそう言われると反論も難しい。
「う~ん。大丈夫だと思うけどなぁ。ねぇショウ?じいちゃんやザラールにも確認してきていい?」
「「「ダメ!!」です!!」」
ちなみに何故ヴァッツが皆から敬われているのか。それは不透明な力だけではなく、何と『トリスト』の国王が彼の祖父らしいのだ。であれば敬意を抱かれるもの非常に納得だ。
「貴女達はただの許嫁でしょ?国家運営に関わる事に口出ししない方が良いわよ?」
「・・・お前みたいな女狐がヴァッツ様の傍にいるんだ。国家とか関係なく警戒するのはわかるよなぁ?」
それにしても口汚いのに迫力と美しさで人の眼を惹くリリーという少女は存在自体が狡い気がする。美貌に関して無意識に負けを認めていたハーラーは凄む表情をまじまじと見つめ返すと彼女も嫌な予感を覚えたのか、視線と顔をぷいっと逸らした。
「『ネ=ウィン』に置いていかれても困るのでな。出来れば『ボラムス』か『アデルハイド』に押し付け・・・引き取ってもらうのが良いだろう。」
『エンヴィ=トゥリア』のサンヌ王もこういう部分を高く評価したに違いない。『ネ=ウィン』の皇太子ナイルがショウ並みにとても酷い事を口走ったので現実逃避がてら思考を別に走らせると話はそこで幕を閉じる。
だが諦める訳にはいかないのだ。この地が未だにどういった場所なのかわからないが本気でヴァッツを堕とそうと考えるハーラーは様々な手段を模索する。
最も手っ取り早いのは既成事実を作る事だが今から子を宿した所で発覚するのは少し先だ。もちろん何もしないよりは良いが彼と数か月も分かれるのは寂しくて仕方がない。
何かないのか。何か、劇薬のような方法は。
焦るハーラーは藁にも縋る気持ちで考えを巡らせていると翌日には『ボラムス』行きが決定したとの通達を受けてがっくりと項垂れた。
「大丈夫!あそこにはガゼルがいるからね!!オレも時々会いに行くからさ?!」
ガゼルというのは『ボラムス』の王であり巷では傀儡王と呼ばれる元山賊のごろつきだそうだが何故かヴァッツとは仲が良いらしい。その辺りの詳しいお話も聞きたい。まだまだ彼と一緒にいたいのに抗う術はないのか。
そんな声にならない叫びに応えてくれる者などいる筈もない。
ここに来て初めて過去の己を恨んだハーラーは仕方なく彼と肉体関係へ持ち込めるよう目標を切り替えたのだがそこに思わぬ場所から助け舟が出された。
「貴女がハーラーさんね?」
それは与えられた自室で感情と思考を整理してた時だった。突然の来客かと思えば彼女は『ネ=ウィン』の皇女だと言う。
「・・・何か御用かしら?」
「ええ。貴女が是が非でも『トリスト』への入国を希望しているって聞きましてね?それでしたら私の方から強く推薦して差し上げてもよろしいかと思いまして。」
何という僥倖だ。正に渡りに船といった提案にハーラーの心も一気に弾み出すが様々な人物と接してきた経験から一歩踏み留まる。
「・・・何がお望みなの?」
恐らく皇女は相当な曲者だ。だから迷わず話の真意を問いただすとどす黒い笑みを浮かべた彼女はゆっくりと頷いて交換条件を提示してきた。
「『トリスト』に入ったらイルフォシアを消して欲しいの。侍女なら毒の混入くらい出来るでしょ?」
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