恩義 -傾国と美女-⑭
ソーダを同席させたのは他でもない、ハーラーの人間性と虚偽を見抜いてもらう為だ。
ただ議会では恐らく本物だという結論こそ出せたものの、自分の知っている人物とは少し違う気がした。だから彼は最後の確認を取る為に対面での機会を懇願したのだ。
「私と二人だけでお話というのは何でしょう?」
もちろんハーラーはそんな事情を知らされていないし、彼の名前こそ知っていたものの取り入る対象でもないので興味はない。
なので早々に話を切り上げた後はヴァッツに目一杯甘えよう、と非常に邪な事を考えていたのだがソーダには誰にも話していない情報が1つあったのを彼女は見抜けなかった。
「流石にあらゆる男を手玉に取るだけはあるな。まさか俺を前にしても全く動じないとは。」
「はぁ?貴方とは・・・会ったかすら覚えてないわ。興味もないしね?それとも私に興味がある感じ?悪いけど今は忙しいのよね~?」
「・・・・・とぼけるな。我が『サピール』国王を誑かした罪、忘れたとは言わせんぞ?」
・・・・・そういえばそんな事もあったような?
まだ駆け出しの10代だった頃、身を立てる為に利用してた記憶はある。だがそれは小国故に王族へ近づきやすかったのと国王が色に溺れやすかったという理由も大きい。
確かにハーラーも成り上ろうとは考えてたが今ほど野望を抱いたり壮大な計画は立てていなかった。つまり誑かした意識はなく、利害が一致したから呼応したに過ぎないのだ。
それをどう説明すべきか。
現在議会室には2人しかおらず、人払いが行われているので頼れる者は近くにいない。なのにソーダからは静かな闘気と怒気を感じるのだから首筋からは嫌な汗な流れ出てくる。
「どうした?弁明があれば聞いてやる。だが、何も無ければこの場で殺す。」
「・・・随分と横暴じゃない?そんな事をしたらヴァッツ様が黙ってないわよ?」
「ああ、『トリスト』とやらの大将軍だったか?俺は『ネ=ウィン』の皇帝から許可を得ているんだ。言っている意味はわかるな?」
まるで死刑宣告のようだ。いや、実際2人きりの許可が下りた時点でハーラーの命運は決まっていたのだろう。
こういう事にならないよう強王ムチャカの妃まで上り詰めたというのに、まさかよくわからない国の議会室で命を落とす事になるとは。せめて侍女の格好ではなく王妃かそれに近い格好をしたかった・・・
最後に見栄えの事が脳裏を過ると自分でもおかしかったのか、思わず笑みが零れてしまう。
「・・・申し開きはないな?」
「ええ。私は私の為に生きて来たんですもの。周りからどんな目で見られてもこれが私、私の人生に口出しはさせないわ。」
「それが沢山の人間を不幸にしてもか?」
「少なくとも私は幸せだったわよ?」
久しぶりに自分らしさを出せた気がする。そう考えると後悔や死への恐怖より誇りを感じたハーラーは胸を張ってソーダを見つめた。
いや、今までなら命乞いの為に得意の美貌と色香を使って彼を堕としにかかった筈だ。しかしその行動に走らなかった彼女は既に自分らしさの一端を変化させていたのに無自覚だった。
「・・・・・どうやら本物のようだ。」
ところが殺意が消えるとやっと彼が丸腰なのに気が付く。もしかすると懐に小剣くらいは忍ばせていたのかもしれないが緊張した空気が霧散した今、自分は試されたのだという結論に落ち着いた。
「・・・貴方もね?残念だわ。もう少し早く出会っていたのならお近づきになれたかもしれないのに。」
「お前みたいな女と関わるつもりは無い。」
そうしてソーダが無造作に部屋を後にすると代わるようにヴァッツが駆け寄ってくれたのでハーラーは安堵からその胸に遠慮なく飛び込む。
「ハーラァァァ?!もう旅は終わってんだぞ?!いい加減ヴァッツ様から離れろっ?!」
そしてとても美しい少女がとても悔しそうな表情を浮かべていたので今度は心の底から歓喜に酔い痴れるのだった。
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