恩義 -傾国と美女-⑬
翌日、この国の将軍達も加わった一行は要塞のような王城に赴くとその中にある飾り気のない議会室に通される。
ハーラーに武術の心得はないが周りは相当な猛者なのだろう。皇帝や皇太子を待つ間、威圧感に胸やけを起こしたのもそのせいだ。
ただ隣に座っているヴァッツだけは普段と変わらないので少しの驚きと安堵で上書きされると同時に、本物の強者とはやはり格が違うのだと改めて知らされた。
「待たせたな。」
そうして最後に皇帝達がソーダを連れて入ってくるといよいよ会議という名の尋問が始まる。
といってもハーラーが持つ情報といえば『ウラヴィ大陸』の男達に接近する為のもの、つまり強請りに使う内容ばかりなのだ。これで良ければいくらでも教えよう、ヴァッツとの旅のせいですっかり油断していた彼女はほとんど緊張せずにそのまま座っているとまずはこちらの正体についての話が始まった。
「我々が事前に入手していた情報ですとハーラー様は己の欲望を満たすべく、様々な男性に取り入っては傍若無人を繰り返してきた。この認識で間違いはありませんね?」
それにしても開幕から酷い内容と言われようにもう少し言い方を改めて欲しいと苦言を呈したかったが、目的である大将軍のきょとんとした表情を見て僅かな笑みと共に心もほぐれる。
「・・・そうね。私自身に力はないから、欲しいものは欲しいものを持つ男を手に入れてきたの。」
「なるほど~。」
これには最初に質問していたハルカがとても納得するように頷いている。ただしこの発言によりリリーや時雨はハーラーがヴァッツを狙っているのだと確信を持ったようだ。
「ふむ。では次に『ウラヴィ大陸』から迷い込んできた人物について詳しく教えて貰おうか。まずはア=ディラファについてだが・・・」
しかしハーラーのような人物はさほど珍しくはないのだろう。皇帝ネクトニウス自らが流すように質問を始めると今度はこちらが大いに驚く。まさかあの傲慢王や唯一の側近ダム=ヴァーヴァまでもがこの世界?大陸にやってきているとは。
「あの2人の事はほとんど存じ上げません。というのも基本的に彼らは自己中心が過ぎますので私などは近づく事を避けてた程です。」
もし話が通じる相手なら黄金城を手に入れられたかもしれない。そんな妄想も頭を過るがやはり命には代えられないだろう。そう考えるとヴァッツという存在は本当に不思議だ。
未だにどのような力を保持しているのかもわからないし、とても子供じみた部分が多い。にも拘らず周囲は彼に最大限の敬意を払っているのだからその価値は黄金城の比ではない筈だ。
「・・・・・では私からも。『ウラヴィ大陸』で警戒されていた人物が他にいるのなら教えて頂けますか?」
「警戒、ですか?」
それなら先程名前の挙がった2人が真っ先に思い浮かぶ。他に危険を冒してまで近づこうとは思わなかったのは冷血王の異名を取るファーンくらいか。
特に隠す必要も感じなかったハーラーはとりあえずその3人の名を上げると、次にウォダーフやサックルといった鳥人族の話題を上げられたので全く知識がないと首を横に振る。
「サックルといえばそれなりに名を馳せた傭兵ですね。腕は立つそうですが何分方向音痴なのであまり役に立たないとお聞きしております。」
むしろそちら側の情報は戦士であるソーダの方が詳しいらしく、彼から補足を入れてもらうと周囲も納得の様子だ。
「じゃあ私からも1つ。『ファティアール』って知ってる?」
そして最後にハルカから意外な名前を聞かれたので一瞬迷うが、隣に座るヴァッツからも興味津々といった眼差しを向けられるとハーラーは『ウラヴィ大陸』に存在する暗殺集団について、知っている事を全て教えるのだった。
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