恩義 -傾国と美女-⑫
「おっせぇなぁ?!マジでずっと馬車旅だったのかよ?!」
『ネ=ウィン』とは『エンヴィ=トゥリア』とまた違った趣のある国らしい。事前に話を聞いたところ、ここは戦闘国家であり建物自体もそれに特化するよう建てられているそうだ。
結局最後まで旅を楽しんでいたハーラーはいきなり現れた野性味溢れる青年の大声に耳を塞ぐ。見た目通りの粗野な彼は正に戦闘国家の象徴とも呼べるだろう。
「うん!!久しぶりにのんびり出来たんだ!!楽しかったよ?!今度はカズキも一緒に行こう?」
「・・・・・そうだな!!ちょっと最近色々立て込んでて疲れてんだ!!もうこのまま何処かに行ってもいいくらいだぜ?!」
「寝言は寝て言いなさい。ヴァッツ様、ショウ様、ようこそ『ネ=ウィン』へ。まずは旅の疲れを癒して頂きましょう。」
彼らのやり取りを遮ってきた少女はフランセルという将軍らしい。何でもこの国には偉大な将軍が4人いてそれには最高位の名誉と権限が与えられているのだという。
(そしてカズキとフランセルはその地位についている・・・ふむ。だったら彼にも手を付けておいて損は無いわね。)
その強さは見た目に反映されているのでわかりやすい。恐らく相当な猛者の筈だがヴァッツとどちらが強いのだろう?詳しい事情を知らない為この時は他国の将軍だとばかり思っていたが積もる話と疲れを解消する為にまずはビアードという4将筆頭の屋敷に案内される。
「おお!ヴァッツ殿にショウ殿、そしてクンシェオルト殿!!ようこそ我が家へ!!少し手狭で恐縮ですがどうぞどうぞ!!」
戦闘国家ではもてなしも将軍の務めなのか。よくわからないままハーラーもその屋内に入るとヴァッツは何度も訪れているらしく、彼の息子を軽く抱きかかえて挨拶をしている。
「ビアード様、私はただの側近です。敬称など付けずに呼んでください。」
「いやいや、ヴァッツ様の側近となれば立場は私より遥かに上でしょう。」
この辺りもややこしいがクンシェオルトは元々この国の4将であり、しかも筆頭だったらしい。にも拘らず今は他国の大将軍であるヴァッツの側近を務めているというのだからやはりハーラーの眼に狂いはなかったようだ。
そうして盛大な歓待が始まったのだがすっかり着慣れてしまった侍女の衣装のせいかヴァッツと共にずっと働いていた癖なのか、ビアードの妻を手伝うフランセルやリリーの姿が目に留まるとつい体が反応しそうになった。
折角旅の終着点に辿り着いたのだから今回はゆっくり楽しもう。捕虜という立場も忘れて自分という女を思い出したハーラーは最初こそそう言い聞かせたのだが次にヴァッツの姿を捉えると目的が感情を上回る。
「・・・・・私もお手伝いしてきます。ヴァッツ様、よろしいでしょうか?」
「うん!きっとセンナも助かると思う!ありがとね!」
ここで気を許すとまた彼からの印象を落しかねない。切り替えた彼女は彼の嬉しそうな返事に最高の微笑を作って返すと早速料理運びに従事する。当然リリー達は疑惑と驚愕の表情を浮かべるがそれがまた快感なのだ。
「おい、あいつハーラーだろ?食事に触らせて大丈夫か?毒とか盛られないか?」
しかし事前情報を知るカズキからは鋭い指摘と視線が向けられたので気分は一気に害された。ただ彼の発言には頷ける部分もある。人にこそ指示はしてきたものの自らそういった手段に走れるのだと少しの感動すら覚えた程だ。
「大丈夫!ハーラーはそんな事しないよ!ね?」
「もちろんですわ。」
だがやはりヴァッツからの信頼を得ている実感、これに勝る快感はないだろう。彼が無邪気にそう告げてくれるだけで不快感は瞬く間に霧散し、また一歩篭絡に近づいたのだと信じて疑わない。
もうすぐだ。確かな手ごたえを重ねていたハーラーはこの夜、ヴァッツの為にしっかり奉仕してみせるとその夜の食事から勝利の味を感じるのだった。
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