恩義 -傾国と美女-⑨
「・・・おい若造?俺達は30人以上いるんだぜ?それをわかってて言ってんのか?それとも国のお偉いさんは数すら数えられないってか?」
「とてもよく理解しているつもりです。ただ貴方達と私達では戦力を越えた圧倒的な差があるのです。何故暗闇の中に捕らえられていたのか、まずはそこからご説明しましょうか?」
それは願ったり叶ったりだ。現在の状況は山賊団33人を相手に左宰相と大将軍の2人だけが対面している。なのに後方では側近や許嫁は全く気にしない様子で楽しそうに旅の支度をしているのでこちらが混乱しそうだ。
強王ムチャカのようにとんでもない猛者であれば切り抜ける事は容易いだろうが見た所2人は碌な武器も所持していない。
ではどうするのか?
興味から知らず知らずのうちに距離を詰めていたハーラーだが彼らはこちらに気が付く事無く武器を構えだすと同時にそれらが一瞬で破壊されたので今度は思わず声を漏らして驚いた。
ただそれは山賊達の方が大きかったらしい。自分が構えた長剣に槍、弓矢などがどういった理屈かわからないまま折れて、切れて地面に落ちたのだから戸惑うのも当然だ。
「・・・ちなみに今のはどうやったんですか?」
「え?全部俺が手で壊しただけだよ?」
更に大将軍が何事もなかったかのように答えるのだから周囲は小首を傾げるしかない。手で壊す・・・となれば山賊達に一人ずつ近づいていく必要がある筈だ。にも拘らず離れた場所で眺めていたハーラーの眼には少なくとも彼が動いた様子は見えなかった。本当に瞬きすらしていなかったのに山賊達の武器が一瞬で、同時に全て壊れたのだ。
「という事だそうです。世界中の猛者が束になってもヴァッツには絶対に、絶~~~~~っ対に勝てません。それでもまだ試されますか?」
これは誇張なのか事実なのか、赤毛のショウが少し少年っぽく問いかけると山賊達も顔を見合わせる。ただ彼らも賊徒というものを理解していないらしい。
「はっ?!どうせ武器に何か仕込んでたんだろ?!おい!!かまわねぇ!!やっちまえ!!」
武器が無くとも殴る蹴るは可能だという安直だが原始に基づく考えはハーラーも同意するところだ。元々働く気力や頭がないから野性的な行動で食い繋いでいる彼らはもはや動物に近いのかもしれない。
それらが今、一斉に牙をむいて来たのとなるとどうするのか?気になるハーラーは息を飲んで見守っているとまたしても不思議な事が起こる。
何と山賊達の攻撃がヴァッツに当たる瞬間に姿ごと消えて、何故か別の山賊の周囲に現れると同士討ちになったのだ。
「痛ってぇ?!な、何しやがるっ?!」
「お、お前こそなんで俺を殴ってるんだよぉ?!ぐはっ?!だ、誰だ後ろから蹴りを入れた奴ぁ?!」
「あがっ!!ちょ、何で仲間に殴られて・・・はおっ?!」
どういった理屈なのかさっぱりわからないが、このままではヴァッツに攻撃は届かないだろう。むしろ同士討ちで半壊していく様子には可笑しさが込み上げてきた。
「あの、もう止めない?みんな痛そうだし?」
恐らくその原因が彼なのだ。申し訳なさそうに声をかけると山賊達もぴたりと攻撃の手を止めて周囲を確認する。
「・・・な、何で仲間同士が殴り合ってるんだ?!おい、相手は向こうだぞ?!」
「無駄ですよ。ヴァッツの力、正確には『闇を統べる者』様の御力で貴方達がヴァッツに触れる事は一生ありません。あ、私に殴りかかられても同じです。護って頂いてますので。」
よくわからないがヴァッツとやらもまた不思議な武具か力を持っているのだろう。それによって山賊の行動を操っている事だけはハーラーも辛うじて理解する。
「お、お前は一体何者だ?」
「オレ?オレはヴァッツ!!もうすぐクレイスが国王になるからその国の大将軍になるんだ!!今も大将軍なんだけどね?」
本当によくわからない。だがもしかすると自分は彼を籠絡する為にこの地に迷い込んだのでは?見た事が無い力と圧倒的な余裕に感銘を受けたハーラーはそう思わずにいられなかった。
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