恩義 -傾国と美女-⑤
「そもそもサンヌ様!!何故そんな私が侍女なのですか?!そこにいる小娘などよりずっと気品と美貌に優れている私が何故?!」
それからまずは最も不満だった部分を叫びながら問い質すと周囲は目を丸くしてリリーとハーラーを見比べている。
「・・・・・まぁ審美眼は人それぞれですし。」
「ショウ?!あの、ハーラー?君も可愛い?美し、い?よ?それにそういうのって他人と比べるものじゃないと思うよ!!」
本来これほど繊細な問題に他人が口を挟むのは難しい。しかし赤毛と青髪の青年はまだ若く純粋故だろう。まるでこちらを気遣うかのように告げてきたのでハーラーの感情は再び爆発しそうになる。
「・・・やれやれ。そなたは何もわかっておらぬようだな?」
そこにやっとサンヌ本人が静かに口を挟むと周囲も注目した。ただ短いながらもその発言には今までにない重みを感じる。
「・・・・・私は美しくないと、気品が無いと、そう仰るのですね?」
「いいや。確かに十分美しいし気品もある。それこそ王妃という立場も卒なくこなせるだろうな。」
「でしたら何故?!」
「うむ。しかしありきたりなのだよ。単一的で量産されたであろう美しさと気品。私はそこに芸術性を感じないのでね。」
だからこそ『ジャデイ』の娘ハフィも彼の目に留まったのだ。自然に育まれた異色の美しさに。ただそれを理解出来ないハーラーには自分の存在価値を否定されたとしか受け取れない。受け取れないのだ。
「わ、私は・・・生まれた時から美しさの頂点に立っていたの・・・なのに・・・なのにこんな、扱いを受けるなんて・・・あ、貴方達はきっと男ではないんだわ・・・」
「え?!オレって男じゃなかったの?!」
「やれやれ。とんだ痴れ者だな。しかしこれで彼女が本物のハーラーだとわかってくれたかね?」
「わかりましたがこれは・・・すみませんサンヌ様、彼女をこちらに引き渡して頂く条件はリリー様、という内容に変更はございませんか?」
「うむ!!無いな!!さぁさぁリリーよ。今日から私のものだぞ。」
もしかすると唯一若さでは負けているのかもしれない。自分は今年28歳、対して翡翠色の髪の少女は体つきや肌感から見てもまだ10代の筈だ。
「・・・サンヌ様、私でしたらそんな小娘以上に全てを満たして差し上げます。ですからどうか、一度だけでも私を御傍に置いて頂けませんか?」
しかし敗北を認める訳にはいかないハーラーはなりふり構わず体に染みついている女特有の弱弱しい仕草で無理矢理割って入る。もはや勝ち負けではない。何としてでも元の生活に戻る為だけに。
「くどい!!さぁショウ殿にヴァッツ殿!!こいつをさっさと持っていくが良い!!そしてリリーを置いて帰れ!!」
「申し訳ございませんが何度もお伝えしたようにリリー様は大将軍ヴァッツの許嫁なのでそれは不可能です。そしてハーラー様ですが・・・どうしましょう?放っておいても害はないようですしこのまま侍女としてここで雇い続けられては?」
「だから侍女じゃなくってせめて愛妾で!!愛妾でお願いします!!」
もう何が何だかわからなくなってきた。愛妾というのも基本的に若い女性が選ばれるものでハーラーはぎりぎりだ。なのにその地位でさえ懇願せねば手に入らないというのだから『エンヴィ=トゥリア』とは恐ろしい国だ。
「私は断る。これほど食傷気味な人間を傍に置きとうない。フラメンはどうだ?」
「父上、ご勘弁下さい。私もこれ程浅ましい人間は侍女にすらしたくない。ショウ様、何とか引き取って頂けませんか?」
何と言う事だ・・・自分はこれ程に無価値な存在だったのか・・・
王族2人に拒絶された事で完全に緊張の糸が切れたハーラーはその場で崩れ落ちる、と思ったのだがいつの間に傍にいたのか。青い髪の青年が優しく抱きかかえてくれた事で妙なぬくもりと優しさと共に意識を繋ぎ止めた。
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