恩義 -染め模様-③
恋愛事情というのはすれ違いやそこに辿り着くまでなら他人に相談する事もあるだろう。
だが今回のように互いに明確な好意を持っており、後は成り行きを見護るだけで成就しそうな場合は横恋慕をしている人間以外に余計な横やりを入れないものだ。
「それでそれで?2人はお互いを好きなの?どこが好きなの?きっかけは?」
ところが今回はアルヴィーヌの興味を満たすだけの舞台となっており、その俳優であるフランシスカとアナは焦りを抑えるのに必死といった様子だ。
「さぁさぁ、フランシスカ様、アナ様、アルヴィーヌ様の御質問ですよ?一つ一つ丁寧にお答えください。」
プレオスも煮え切らない2人の関係を後押しする為に切り出したのではなく、アルヴィーヌの些細な変化に更なる成長を求めて2人を利用したいだけらしい。この辺りが智将と呼ばれる所以なのだが目的の為に手段を選ばない部分はショウと似通った部分がある。
「え、えっと・・・ど、どうでしょう?俺は特にアナを好きという訳じゃな・・・痛たっ!」
それにしてもフランシスカは見た目以上に臆病というか照れ屋というか、アルヴィーヌですら本能的に感じている部分を中々素直に認めようとしない。
アナも気に入らない事への反抗は見せるものの、いざ自分の気持ちを表現してもらおうとすると尻込みしてしまうのだ。
「・・・・・不思議だね。お互いが夫婦になりたいって思ってて私もいいよって言ってるのになんでこんなに上手くいかないんだろ?」
「そうでしょう?これが恋に落ちた人間の等身大となります。是非心行くまで観察して下さい。」
まるで授業の一環のような、実験でも行っているかのような発言を受けると流石に2人揃って仲良く反論してくる。アルヴィーヌもそれがおかしくて呆れつつ苦笑いを浮かべていたのだがそこにずっと無言を貫いていたアサドが遂に口を挟んできた。
「ええいまどろっこしい!!つがいになれるのならさっさとなればよいではないか?!そして子作りに励むといい!!」
「アサド?!ちょっと言い方が直接的過ぎるだろ?!」
「うるさい!!ファヌル王が君臨している間は誰とも結ばれない俺と違って、お前達はアルヴィーヌの許しを得ているのだろう?!何を悩む必要がある?!」
初めて聞く事実よりもアルヴィーヌ以上に直接的な発言は皆を唖然とさせてしまう。特に子作りに励むという言葉はアルヴィーヌの記憶と興味を十二分に掻き立ててしまった。
「子作りって励むものなの?結婚したら勝手に赤ちゃんが生まれるんじゃないの?セヴァみたいに。」
この問題を説明するのはプレオスですら難しいらしい。1人を除いて分かりやすく視線を逸らすと呆れかえったアサドが深いため息の後にそれを説明しようとしたので今度は全員で彼を取り押さえてしまう。
「アルヴィーヌ様。もし貴女が本当に、心の底からヴァッツ様を愛おしいと思われる気持ちが芽生えたらお教えしましょう。」
最後はフランシスカ達の仲などそっちのけで無理矢理切り上げられるとアルヴィーヌは頬を大きく膨らませる。
それは話をはぐらかされたからではない。まるでヴァッツへの愛がまだ足りていないと言われたように感じたからだ。彼とは既に契りを結んでいるのに何故だ?
これは後ほど強く、強く問い詰める必要がある。昼食を終えたアルヴィーヌは怒りでほとんど身が入らないまま午後の授業を終えると早速フランシスカ達の応援を背にプレオスを追いかけ回すのだった。
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