恩義 -主君-②
「・・・あくまで『暗闇夜天』の元頭領としてお話させていただきますと、主の御子様、または主の指名した後継者を手に掛けようなど謀反以外の何ものでもありません。極刑が妥当でしょう。」
普段は自由奔放なおてんば娘だがやはり芯には『暗闇夜天』の掟がしっかりと刻まれているのだ。切り替えたハルカがとても落ち着いた様子で堂々と述べるとこちらまで畏まってしまう。
「ふむ。確かに。これを許せば軍が、国が成立しなくなるからな。さて・・・ルサナはどうじゃ?」
「ぇぇ・・・ぇっと・・・」
どうしよう?自身もクレイスの為に同意見だと言えばいいのだろうか?だがそれだとあまりにも自主性がないし、何よりワミールの命と立場をぞんざいに扱い過ぎる。
少なくとも今はルサナの言葉を求められているのだから、どのような結果になろうとも自身が責任をもって発言せねばなるまい。
「・・・ワミールさんは、その。どうしてもクレイス様が王様になるのが許せないんですか?」
「・・・・・」
なのでまずは自分が最も信じている彼の話から切り出した。クレイスが国王になればきっと世界は安寧を迎えられる。それが『トリスト』なら猶更だ。
「あの御方はとても慈悲深くて、強くて、きっと皆を幸せにしてくれると思うんです。お友達も頼りになる方ばかりですし・・・その、何か足りない部分があるのなら仰って下さい!私が全力であの御方を支えて見せます!」
恐らくワミールも本心からの会話を望んでいる。それはガゼルとのやり取りでも垣間見えた。嘘を重ねるのに疲れたのなら、こちらは真っ直ぐな本心だけで立ち向かってみよう。
そう思ってもう少し語ろうとした時、不意にワミールの双眸から涙が零れ落ちてきたので驚いて息を飲む。
「・・・・・はい。クレイス様はスラヴォフィル様が御指名された御方、イルフォシア様とも仲睦まじく、将来は間違いなく名を遺す国王となられるでしょう。」
そしてこれ以上ない程の賛辞が告げられたのでどんな感情を抱けば良いのかわからなくなる。となると素直になれないだけなのか?クレイスが次期国王になる事への抵抗感さえ取り除ければ彼の気持ちにも整理がつくのでは?
ハルカも同じような感想を抱いていたに違いない。彼を挟んで再び顔を見合わせるがワミールを良く知るスラヴォフィルだけは何かを察したのか、浅く頷いて腕を組みなおした。
「・・・・・お前は真面目過ぎる部分があるからな。去るよりも散る事を選んだまではわかった。だがその理由じゃが・・・・・ワミールよ。お前の口から聞きたいのう。」
今のやり取りで何がわかったのだろう?スラヴォフィルがとても優しく問いかけると彼は涙を隠すかのように跪く。
「・・・申し訳ございません。私は・・・私の心はガゼル王にも忠誠を誓ってしまった。どうか二心を持った私をこの場で斬り捨てて頂きたい!!」
「「ぇええぇっ?!」」
絶対に声を漏らすべき場面ではなかった筈だが、その内容があまりにも突飛であり酷くもあった為、2人は何度目かわからない驚愕の声を同時に漏らした後、慌てて両手で口を覆う。
ただその背中からひしひしと伝わってくる決死の覚悟とは裏腹に、スラヴォフィルがとても嬉しそうな笑顔を浮かべていたのでルサナはその驚きをハルカとの目配せだけで何とか抑える事に成功した。
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