恩義 -姦しい諜報-⑥
「今ハルカの言った意見は俺が考えてたのと同じ奴だな。これは以前お前にも何度か話したはずだ。」
ただワミールがどうこうよりガゼル自身がクレイスの王位継承に反対する立場だと知った以上、後で彼にも何かしらの制裁・・・説得を加えねばと心に刻む。
「はい。」
「その時お前はさほど同意していなかった。むしろ興味のない様子だったのは覚えてるぜ。なのにこの場を切り抜ける為に適当な相槌なんか打ちやがって。言いたくないのは構わねぇけどあんまり嘘を重ねんなよな?」
しかし不思議だ。ガゼルは傀儡という偽りの王でワミールは『トリスト』から『ボラムス』を護る為に派遣されている正式な将軍であり、立場から考えると本来の上下関係は真逆の筈だ。
なのに説教する光景からは確かな主従関係を感じてしまう。これはどういった理屈なのだろう。
「・・・そうですね。嘘・・・を重ねるのには少々疲れました。」
そしてガゼルの言葉に吹っ切れたのか、ワミールが心なしか明るい表情を浮かべるとこちらに鋭い視線を向けて来たではないか。
「ルサナ殿、ハルカ殿。私は『トリスト』の王にはスラヴォフィル様以外を認めません。これが答えです。」
更にやっと本心を伝えてくれるとルサナもその言葉に感銘を受ける。そうだ、主従とはこうでないと。心から主に忠誠を誓う彼の心意気に中てられて体中がわなわなと震え出したのだが目的を忘れてはならない。
「う~ん・・・でもそのスラヴォフィル様が王位を譲るって言ってるのよ?貴方の望みは叶わないんじゃないかしら?」
ところがワミールの気持ちに応えようと少し言葉を選ぶのに手間取り過ぎたらしい。ハルカに先を越されると彼は寂しい笑みを浮かべて力なく首を横に振る。
「仰る通りです。私の望みは大恩のあるスラヴォフィル様に仕える事でした。そしてそれが今終わりを迎えようとしている・・・潮時かもしれませんね。」
それがクレイスの王位継承に反対する事と何か関係があるのだろうか?大恩という言葉に引っかかったルサナはハルカと2人で小首を傾げるもガゼルだけは仏頂面を浮かべたまま以降は一切言葉を発しなかった。
あれから三日後、ワミールが反対している事だけは突き止めたものの説得の部分をすっかり忘れていたルサナは突如彼が『トリスト』に姿を現した事で思い出す。
「・・・もしかして軍事革命でも起こすつもりかしら?」
ハルカも感じる部分があるのだろう。2人で物陰からこっそり覗いていた時、そんな事を呟いてきたので思考は大忙しだ。
「えっ?!えっ?!じゃ、じゃあ止めた方が良いの?!それとも後ろから襲っちゃう?!」
「・・・まだ決まった訳じゃないわよ?ルサナちゃん、もう少し落ち着いて?」
『暗闇夜天』は諜報機関としても機能しており、今の所そういった情報は耳に届いていないから警戒し過ぎるのも良くないと教えてくれたが、それなら最初から不安になるような事を口走らないでもらいたい。
「最悪の事態まで想定して動くのが私達だからね。」
「な、なるほど・・・勉強になるわ!」
見た所単身だし切羽詰まったような気配もない。ただスラヴォフィルの部屋へ真っ直ぐ向かった所を見るにやはり王位継承の話をする筈だ。
この場合、どう行動すれば良いのだろう。
既に説得の機を失っていたルサナはハルカと一緒に尾行しながら必死で答えを探すがワミールもそれなりの猛者なのだ。
「・・・ルサナ殿、ハルカ殿。気になる様ならご一緒にいかがですか?」
部屋の前までやって来るといつから気が付いていたのか。
物陰から揃って頭半分を覗かせていた2人に声をかけてきたので、こちらも覚悟を決めて頷き合うとワミールを挟んで入室するという簡略的な作戦を組んでから合流を果たすのだった。
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