恩義 -姦しい諜報-⑤
「あ、危なかった・・・ルサナちゃん?!飛び慣れてないのなら教えてよね?!私じゃなきゃ死んでたかもしれないわよ?!」
「いや~ごめんごめん!そういえば誰かを抱えて飛ぶのは初めてだったかも?」
そういう性格だというのは彼女もわかっているのだろう。普段通り強く詰問されても笑って返すとハルカは一瞬目を丸くしてから諦めた様子で首を横に振っていた。
「ま、いいか。ほぼ『ボラムス』に到着したしね。さてさて、ワミールはいるかしら?」
そこは『ボラムス』王城のほぼ目の前、衛兵達も落ちてきた2人を見て口をぽかんと開けていたのだがそれなりに顔の知れた2人を認識すると早速中へと案内してくれる。
しかしどう切り出せばいいのか。
自分でも行き当たりばったりだとは理解しつつ、今回はハルカという心強い相方がいるお陰で妙な自信をつけていたルサナは深く考えるのを止めてまずはクレイスを一度は攫おうとした宿敵、傀儡王ガゼルと相対する。
「おう!珍しいな?ハルカとルサナか?ヴァッツもクレイスも無しにお前達だけで来るとは。・・・さては何か企んでるな?」
その発言からも警戒するに十分だ。元山賊で見た目もそこいらのごろつきと変わらないというのに何故こんなに勘が鋭いのだろう。
「ふっふっふ~!御明察!実はワミールに話があるのよ。会わせてもらえる?」
「ほう??良くわからんが・・・ワミール!お前に客だぞ?!」
元々小国であり臣下との距離が近いのもある。ガゼルが執務室から隣の壁に向かって大声で叫ぶと呆れた様子のワミールが渋々姿を現してくれた。
「ガゼル王、一体どうされました?うん?これはこれは、『暗闇夜天』のハルカ殿とクレイス様の側近ルサナ殿ではありませんか。」
対して『トリスト』の将軍はこちらの立場をしっかり理解した上で丁寧に深く頭を下げてくれる。ただルサナは彼の嫌うクレイスの側近なので少しでも敵意を見せて欲しかったがそのような気配は微塵も感じられない。
だからこそ余計に混乱するのだが来年にはクレイスの戴冠式が迫っている。ここはしっかりと彼の寵愛と信頼を得る為にも突貫するのみだ。
「ワミール様!!単刀直入にお尋ねします!!どうしてクレイス様の王位継承に反対されているのでしょう?!」
「わお?!ルサナってば直情的~!でも嫌いじゃないわよ?!」
「んんん?何だ何だ?ワミール、詳しく説明してくれるか?」
誰もが認めるド直球を受けて何を感じる?ワミールの変化を見逃さないよう双眸を皿のようにして観察していると彼は一瞬だけ驚いた様子を浮かべた後、目を閉じて僅かに首を横に振った。
「・・・・・申し訳ございませんが、これは『トリスト』と私の問題です。お答えは出来ません。」
また隠し事か。何とも煮え切らない答えにルサナは無意識に間合いを詰めてその顔を良く良く覗き込んでいくと彼の体は傾いた大樹のような体勢になっていく。
だがそんな状況に追い込まれてもこちらに嫌悪や憎悪を向けてこないのだからよほど感情を隠すのが上手いのか、もしくは他に原因があるとしか思えない。
「となると、やっぱりスラヴォフィル様の御子様が跡取りに相応しいって考えかしら?」
だからクレイスやその周りの人間を憎んだり嫌ったりするのではなく、ハルカの言う正統後継者を次期国王へ推したいのだという理由にはガゼルも深く頷く。
「・・・そうですね。私はそう考えております。」
「おい。まさか俺にまでそんな嘘が通ると思ってんのか?」
ところが同意していた傀儡王が間髪入れずに否定するとワミールだけでなく、ルサナやハルカも目を丸くして彼に視線を集めていた。
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